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タラッサの歌姫―巫女ですが偽装結婚しました―  作者: ムツキ
第四章・捕縛に尋問、そして真実
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4-6・調査の狙い


 内心焦るニア。

 キリルの妻でありながら、故郷を知らないとなれば要らぬ疑惑を生みかねない。だがネロは気にした風もなく続けた。


「オデラは造船技術がとても発達した国ですぅ。多くの船がオデラの模造品(もぞうひん)から出来てますねぇ」

「へー……そうなんだ」


 動揺を隠し、返答するもキリルは複雑な顔をする。


「えぇ、ですからミルティアデス様もオデラを征服したがってましたヨ。もっとも、いい(こま)を手に入れたからご満悦(まんえつ)でしたケド」

「駒? 駒って?」

「俺たちのことだ」

「えーっっ」


 キリルの苦い表情に、ニアは悲鳴を上げる。どんな意図を持っているのか分からないが、そんな風に思われていたとは(つゆ)も知らなかったのだ。


「ところで、あなた託宣の巫女だったんですよね。今とか出来るんですかぁ?」


 ネロに言われて、ニアは首を傾げた。


「神殿でしかしたことないから、分かんない……。でも、やってみる?」

「あ、無理にじゃないんで。ただの好奇心でしたから」

「止めておけ、全然当たらないからな」


 キリルがボソリと言う。ニアはキリルを(にら)むと憤然(ふんぜん)と文句を言った。


「キリルっ、最後のはあたしの嘘だって言ったじゃないっ。いつまで言うのよ!」

「……本物の方も当たってない」

「当たるわよ、きっとっ」

「そうかそうか」


 いかにも信じてませんとばかりに生返事(なまへんじ)をする彼に、ニアは苛立つ。だが、実際彼がどんな予言をされたのか、ニアには分からないのだから何を言っても無駄だった。


「ネロ、結局俺たちはどうなるんだ?」

「そうですねー、今のところ、巨人退治を手伝ってくださいーかな?」


 にっこり笑う男に二人は固まった。


「そ、それってっ! まさか、またアレと戦おうっていうのっ?」


(冗談でしょっ)


 内心悲鳴をあげるニア。キリルも声をあげる。


「正気かっ? ……いや、正気だな」

「え、何? どゆことっ?」

「よく考えればおかしい話だ。ニアにやたらと海底調査をさせていると思ったら、軍艦を引き連れ戻ってきて、倒そうってわけだ。それには、大軍が安全にあの場に着く必要があるからな、自然と海底調査にも熱が入るという訳だ」

「えーーっっ。バカじゃないのっ……あっ」


 つい勢いで叫んでしまった暴言を慌てて、口を押さえてやり過ごす。さすがに捕虜同然の自分が、ミルティアデスの悪口を言って無事ですむはずがないとニアにも分かっている。

 キリルはニアの叫びを無視して、ネロに詰め寄る。


「ミルティアデス殿に会わせろ。どう考えても無理があるっ。あの巨体を見ただろうっ。それにニアの話を聞いてなかったのか、あの音は失神や麻痺を……っ」

「はいはい。分かってます」


 ネロは両手をあげて降参のポーズを取る。だが笑みの張り付いた顔のまま、続ける。


「でもですねぇ、主はミルティアデス様なんです。会いたいなら連れていきますケド、無理ですよ、きっと。だってあの人、巨人討伐に燃えちゃってますから」


 彼は心底面白そうに笑う。


「なんでっ、だって、今度はもっと危ないかもなのにっ」

「えぇ、そこでーですね。協力してください」

「は?」


 ネロの意図する事が全く分からないまま、ニアはとりあえず首を横に振った。


「い、嫌よっ。どんな協力か分かんないけど、あんなのと戦おうって気が知れないものっ。きり……アナタ! しっかりミルティアデス様に言ってっっ」

「言われるまでもない」

「夫婦って似るんですねー、考え方がそっくり」


 茶化すネロを睨み、キリルは彼とともに部屋を出ていく。ニアは胸の奥に産まれた焦燥感に心臓を鷲掴(わしづか)みされていた。

 彼女の心が、喩えようもない間違いだと警鐘(けいしょう)を鳴らしていた。



読んでくださってありがとうございます。

【次話公開 → 本日 12:10 予定】

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