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33、隠された関係

中庭を通りかかったとき、「にゃあ」と仔猫の鳴き声が聴こえた。

またユーリウスと遊んでるのかしら。

私は中庭に入って、あたりをきょろきょろと見渡す。でも姿は見当たらない。

そのうち、また「にゃあ」と聴こえた。今度は頭上から。

上を見上げると、木の枝に仔猫が掴まっていた。

降りられないのか、その場でじっとしている。

こちらを見下ろし、助けを求めるように鳴いている。


「あらら。降りられなくなっちゃったのね。待ってて。今、降ろしてあげるから」


私はなんとかよじ登ると、仔猫がとまる枝まで行き着く。


「ほら、おいで、こっちよ。」


手招くと素直に仔猫が寄ってくる。


「よし、いい子ね。待ってて、今おろすから」


片手で抱いて降りようとした時だった。


「ひゅー、いい眺め」


下から口笛と男の人の声が聴こえた。

その言葉が何を意味するか瞬時に悟って、私はさっとスカートを押さえようとする。


「え、やだ!」


けれど押さえた手は自分の体を支えていたほうの手。

仔猫を片手で抱いていた私は、木を掴んでいた手を離したせいで、地面に落下していく。


「きゃああ」


「おっと!」


でもいつまで経っても、衝撃はやってこない。

私は恐る恐る目を開けると、目の前には男の人の顔。

私は男性の腕の中に抱きかかえられていた。

この人物が先程の声の主だとぴんとくる。


「ふー。びっくりした」


男性が安堵の溜め息を吐く。けれど、私と目が合うと口の端を吊り上げた。


「天使が落ちてきたかと思った」


ばちりと音がしそうなほどのウインク。

こ、このひと――!?

『フェリクス・ルベル』じゃない!?

言わずもがなの『きらレイ』の攻略対象者。

攻略対象者の中で一番の遊び人、軽薄で女好きで有名な色男である。

少し長めの紫の髪。切れ長の灰色(グレー)の瞳。すっと尖った鼻に、薄くて形の良い唇。

常に色んな女子生徒を侍らかす、悪い男の代名詞! それがフェリクス・ルベルである。


「あれ? 固まっちゃった?」


フェリクスがきょとんとする。


「おーい、仔猫ちゃーん」


私の腕の中にいる仔猫が「にゃあ」と鳴いた。


「君のことは呼んでない。――それとも本当に天使? 地上に降り立った罰で、口がきけなくなったなら、俺の出番だけど」


そう言って、フェリクスが顔を近づかせてくる。

秀麗な顔が間近に迫り、私は正気に戻る。


「な、なにするの! 離れて!」


「なにって。呪いを解くにはただひとつ。王子様からのキ・ス」


やることは非常識なのに、茶目っ気のある表情のせいで毒気を抜かれる。

普通なら怒る場面で、思わず脱力してしまった。


「あなた、面白い人ね。とにかく降ろして。助けてくれてありがとう」


フェリクスが私を地面に下ろしたあと、私の顔をじっと見入る。


「君、もしかしてカレン・ドロノア?」


「私を知ってるの?」


「もちろん。可愛い子の名前と顔は全部、チェック済み」


「あ、そう」


私は呆れて生半可な返事しかできない。

本当にゲーム通りのプレイボーイだわ。


「なんてね。さすがに俺もそこまでヒマ人じゃない」


どーだか。私が胡乱げな目つきを返すと、フェリクスがちょっと生真面目な顔つきになった。


「ほんとなんだけど。イリアスの婚約者だろ、君」


「イリアス様を知ってるの?」


「もちろん。親戚だから」


「嘘っ!?」


ゲームではそんな設定教えてくれなかったけど!? 知らされなかったってことは、そんな重要な設定じゃないってこと?

イリアスとフェリクスと絡むシーンもほとんどなかったし。むしろ、お互い避けてるんじゃないかってくらい会わなかった。

私が驚いて声を出せずにいると、フェリクスが不思議そうに見つめてくる。


「あれ、知らない? やっぱりあいつ、何も言ってないのか。あいつらしいって言えばあいつらしいけど。ったく、俺のことくらい、伝えておけよな」


ひとりでぶつぶつと言い始める。


「あのー」


ひとりの世界に入ってしまったフェリクスに呼びかける。


「あ、ごめん。それじゃあ、改めて名乗るよ。俺はフェリクス・ルベル。君とおんなじ一年。それとイリアスとはいとこの関係。よろしく」


「私はカレン・ドロノアです。こちらこそご挨拶が遅れて申し訳ございません。これからどうぞお見知りおきを」


仔猫をおろし、スカートを少しだけ持ち上げて、挨拶する。

そんな私を見て、フェリクスが首を捻る。


「なにか?」


「いや、噂と違うから。何か噂では高慢で高飛車で、えーと、それから何だっけ? ああ、そうだ。趣味が悪い!」


「ははは」


それ本人の前で言う? 私はから笑いするしかない。


「お茶会でカレン・ドロノアに会ったって子に聞いてさ。まあ、昔の話だけど」


フェリクスは私の気持ちお構いなしに続ける。


「当時イリアスの婚約が決まったばっかで、あいつの婚約者になるなんてどんな子なのか、すっげー気になってさ。あいつに聞いても、嫌な顔するだけで、全然答えてくんないから」


ええ、ええ。私もイリアスのお気持ちお察しします。 


「でも、いつからか、雰囲気変わったんだよな。婚約者の話振ると、負のオーラしか出さかなかったあいつが。で、ずっと気になってたわけ」


あ、それはきっと、私が憑依してからだわ。じゃあ、少しは好感持ってくれるようになったのかしら。それが例えノミの心臓程度の重さしかなかったとしても、ないよりはマシよね。


「この学園に一緒に通うようになるわけだし? これを機に紹介してくれって言ったんだけどさ。すっげー嫌がられて。動じないあいつの、心底嫌な表情見られるのってけっこう貴重なんだけどさ」


ははは。私の勘違いみたい。やっぱり嫌われてるわ。

悪女を婚約者として紹介しなくちゃならない状況なんて、できれば避けて通りたい道よね。


「紹介したくないなんて、どんだけかと思ってたけど。なんだ普通じゃん」


フェリクスが眉をあげて、私を見やる。


「受け答えも悪くないし、ちゃんとお礼も言えるし、自分のことも鼻にかけてないし。おまけに美人」


落とすことしか言わなかったフェリクスがここに来て、急に褒めまくる。

もっと言ってちょうだい。できればあなたのいとこの前で。


「行くとこなかったら、俺が貰ってもいいくらい」


「お前にはちゃんとした相手がいるだろ」


フェリクスが再び茶目っ気を見せたところで、別の声が割り入った。


「イリアス様っ!?」


私はびっくりして、振り返る。見ればいつの間にかイリアスが後ろに立っていた。


「なんだ、大将の登場か。もう少し遅かったら、俺が口説いてたのに」


「あんまりふざけていると、血縁切るぞ」


「冗談も通じないなんて、相変わらず固いな」


「逆にお前が軽くない時はいつなんだ」


「嫌だな。俺は至って、真面目なのに。相手にはいつだって誠心誠意応える心積もりさ」


イリアスが呆れたようにはあと溜め息を吐いて、首を振った。

私は二人が喋っている間、目を丸くして聞いていた。

イリアスが誰かと、こんなテンポの良い掛け合いをするなんて。

真面目なイリアスのこと、お気楽そうなフェリクスなんて絶対肌に合わなさそうなのに。合うどころか、むしろ毛を逆立てて嫌がりそうなのに。

そんな水と油の二人がどこか波長が合っているように見えるのは決して気の所為じゃない。

お互いの心の内がわかっているかのような掛け合い。

まさにケンカするほど仲が良いと思えるような図のふたり。

正反対の性格が返って、良い作用をもたらしているのかも。似た者同士だと逆に反発し合うこともあるだろうし。うんうんとひとり納得する。

あれ? それなのに、なんでゲームではあんなにお互い素っ気なかったんだろう。

私が首を傾げていると、イリアスが顔を向ける。


「こんなの、いちいち相手にするな」


「こんなのなんて、ひどいな。仮にも同じ血をひく者同士だぜ」


「なら、その態度をなんとかしろ」 


「態度って?」


「お前、自覚ないのか――?」


イリアスがまるで疑っているかのように、フェリクスを凝視する。その言葉の裏は、わかっててやってるんじゃないのか、だ。

でもフェリクスには通じてない。


「だから、何がだよ」


「だから――……」


言葉を続けようとして、珍しく躊躇する。それから、私のことをちらっと見た。

なに? なんか私した? イリアスの機嫌を損ねるようなこと、私してませんけど。

人を見て、言葉を出すのをためらうなんて、感じ悪い。どうせ、私に関する悪口でも言おうとしたのね。フェリクスにも散々言われたし。

私がジト目で見ていることに気づかず、イリアスがわざとらしく、咳払いをする。

あー、ごまかそうとしているのが見え見えよ。


「――……もういい」


何故だがちょっと耳が赤くなっている。

フェリクスがそれを見て、何かを察したのか、にやりと笑った。


「あー、なるほどね」


イリアスを見て、にやにやする。それから私を見て言った。


「俺に君を紹介してくれない理由がわかったかも」


それは私が悪女だからでしょ。そんなの聞く前からわかってるわよ。


「イリアスは知ってるからね。ほんの優しい言葉をかけただけで、俺に夢中になっ――」


そこで言葉を途切らせた。イリアスに後ろから口を塞がれたせいだ。「ふごごっ」とあとに続く言葉が呑み込まれる。


「本気で口を塞がれたくなかったら、今すぐその口を閉じろ」


絶対零度の空気をイリアスが背後から滲ませる。

口を塞がれながら、フェリクスが降参の意を伝えようと慌てて手をあげた。


「ぷはっ。わかった、わかった。もう言わない。だから、手を離せっ」


イリアスが力を抜くと、フェリクスがその腕から逃れる。


「ったく、本気で怒るやつがいるか。ほんの少し、からかっただけだろ」


「からかうってのは、自分と同じか、もしくは自分より下のやつを相手にして言うんだ」


「あー、はいはい。俺が間違ってました。今度からは俺と同じ低いレベルのやつをからかうよ」


フェリクスが嘆息する。


「ったく、冗談も通じない」


独りごちる。


「何か言ったか?」


「あー、独り言、独り言。これ以上、俺の口が滑る前に退散する。――じゃね、カレンさん、会えて良かったよ」


フェリクスが私に向けて、ウインクする。

そして、歩き去ろうと背を見せたところで、上半身だけ捻って振り返った。


「あ、そだ。イリアス。アルが久しぶりにお前に会いたがってた。近々遊びに来いよ」


「わかった」


「じゃ」


短い別れの言葉を残して、歩き去っていく。

でも、私の目にはフェリクスの姿は映らなかった。脳内に、ある重要なキーワードがこだましていたからだ。


――『アル』


たったひとつの言葉が、とても重要に思える。

何気ない言葉。聞き流しても別段おかしくはない。なのに、私の耳に妙に引っかかった。

『アル』。フェリクスの家族――。

警告の信号が頭の中に明滅した。

あー!! フェリクスの弟!!

私は思い出した。

フェリクスの弟はゲーム開始時では、行方不明となっているのだ。

彼の名は『アルバート・ルベル』。まだ十一歳の幼い少年。

彼は家族に無断で家から抜け出し、そのまま行方不明となる。

アルバートの姿が屋敷のどこにも見当たらないことに気づいた家族が慌てて外を探しにいくものの、見つかったのは、鞍をつけた無人の馬だけ。

馬は敷地内の湖の近くを所在なくさまよっていた。

馬の背にはアルバート専用の鞍がつけられていたから、彼が屋敷の外に出たのは間違いない。

領地内中、そして最悪なことを想定して、湖の中まで探らせたが、アルバートは見つからなかった。

だが、それで諦めるルベル家ではなかった。

少しの手ががりでも良いから、近隣周辺をあてなく探し続け、王都の警備隊にも協力してもらう。

しかしなんの成果も出ないまま、やがて警備隊の捜査は打ち切られてしまった。ひとりの人間のために何ヶ月もの間、警備隊の手を割くわけにはいかないからだ。王都では他にもいくつもの事件が発生するため、ひとつの事件にかかりきりになるわけにはいかないのだ。

そのことでさらに悲嘆にくれるルベル家。フェリクスの父は疲労でやつれ、母は既にノイローゼ気味である。

さらに家族に追い打ちをかけるように、決定的なことが起こった。

アルバートが失踪してから半年。アルバートがいなくなったと思われる湖から、少年の遺体が見つかったのだ。当時湖はさらったはず。けれど、もしかしたら見落としはあったのかもしれない。これほどまでにも探しても見あたらないのだ。その遺体がアルバートのものであると考えたとしても致し方ない。

両親は受け入れた。もう充分、傷つき、悲しみ、苦しんだ。アルバートを探すことで、これ以上責苦が続くことにもう耐えられなかったのである。

これに反発したのがフェリクスだ。弟は生きている、どこかで必ず助けを待っていると訴えても、両親は頷かない。

すっかり希望をなくし打ちひしがれた両親にフェリクスは失望した。

もう忘れなさいと言う。忘れられるわけがない。

弟が行方不明になった責任は自分にあるのだから。フェリクスはそう思った。

なぜなら、アルバートが最後に乗った馬は、誕生日プレゼントに自分が贈ったものだったからだ。

馬さえ与えなければ、弟が行方不明になることはなかった。後悔が重くのしかかる。

頼りにならない警備隊も、探すのを諦めてしまった情けない両親も彼の苛立ちを募らせるが、何より一番憎いのは自分だった。

そして荒れるように、堕落していく。 

何もできなかった自分が、何事もなかったように生活できるはずがない。自分なんかに幸せになる権利はない。そして両親への反発もこめて、自堕落な生活を送っていく。

女遊びに興じたのは、それが一番手っ取り早かったから。自分の容姿に惹かれてやってくる女たちは大勢いる。強要はしない。けれど拒みもしない。

自分を虐めるかのように、自分の体を適当に扱う。

そんな時、出会ったのがヒロインだった。

自分をもっと大事にしてというヒロインに対し、その掴みどころのない性格で適当にかわしつつ、適当に振り回す。

最初はそんなフェリクスだった。

でもめげずに真剣に向きあってくるヒロインに徐々に心を開いていく。


『なんで、こんなやつ、心配すんだよ。ほっとけよ』


最初は抵抗するフェリクスだった。

しかし、何度かやり取りしているうちに、本当の彼の姿が見えてくる。


『君はこんな俺を本気で気にかけてくれるんだな。こんな俺なんかこの世に存在しないほうがいいのに。だから――。……だから、この俺が代わりに――』


泣き崩れるフェリクス。

――『俺が代わりに消えれば良かった。』

最後まで言えずに消えた言葉。

まだ何も知らないヒロインにはわからない。

そして、フェリクスは過去に起こった事件をぽつりぽつりと明かし始める。

悲しみは完全に消えたわけではないけれど、心の重荷を少しおろして、フェリクスは笑う。


『最後まで聞いてくれて、ありがとな。少し軽くなった。今じゃ、両親にさえ呆れられてる俺だけど……。俺を気遣ってくれたやつの手も、俺は自分から振り払っちまった。そいつとはもう取り返しはつかないけど――。君は間に合って良かった――……』


笑った表情がちょっと寂しそうだったのを今でも覚えている。彼を抱きしめて慰めてあげたいと思った女子の数は計り知れない。

彼が心から笑える日がくればいいのにと切に願った。

ちょっと待って?! 私はそこで思考を無理矢理中断させた。

もしかして『俺を気遣ってくれたやつ』って、イリアスのこと?

だって、そうでしょ?! あんなに仲良さそうだし、話を聞いてれば小さい頃から交流があるみたいだし。ずっと昔から気心の知れた仲だったのよね。

ようやく合点がいったわ。イリアスの性格上、フェリクスが本当の遊び人だったら、きっと避けて交流しなかったと思うのよね。そういう人、軽蔑しそうだし。

でも、今仲が良いのは、フェリクスが本当はそういう人じゃないから。もとから女の子が好きでからかうことはあっても、本気で手を出すことはない。そんなフェリクスを知っているから、イリアスは彼と友達で居続けている。

『きらレイ』でも、ヒロインに心を開いてからは、フェリクスは女遊びを一切やめ、ヒロインを一途に想ってくれるキャラになるのだ。きっとそっちが本当のフェリクスの素顔。

そんな仲良いイリアスとフェリクスの関係が変わってしまうのは、おそらくアルバートの事件があってから。

女の子に本気で手を出して、荒むようになったことで、イリアスなりに少なくとも一度は止めたのかもしれない。けれど、フェリクスが小っ酷く拒絶したせいで、関係が壊れてしまった。

だから、『きらレイ』では不自然なくらい、絡むシーンがなかったのね。

いやぁ、こんな設定があったなんて、憎いわねえ。誰も想像できないわよ。

私がたまたまふたりが居合わせるところにいたから良かったものの、それがなかったら、一生気付かなかったわね。

裏事情を知ることができて、ちょっと得した気分。

って、喜んでる場合じゃなかった。

フェリクスの弟がまだ行方不明じゃないってことは、まだ無事ってことよね。

いついなくなったんだっけ。確か、フェリクスの話では二年前だから――。

私は指を折って、逆算する。

って、今頃じゃない!?

私はばっとイリアスを勢いよく振りかえった。


「イリアス様!!」


私の勢いに軽くイリアスが足を引く。


「な、なんだ」


「フェリクス様の弟様、お誕生日はいつですか!」


「なんだ、急に」


「いいから、教えて!」


「た、確か三月だった気が」


うおっ。もう終わってる。軽いショックが私を襲う。でも、まだ希望は捨てない。恐る恐るイリアスを伺う。


「その、お誕生日で、馬を贈られて、なんてしてませんよね?」


「よく知ってるな。フェリクスから聞いたのか?」 


うわっ。ゲームのあらすじをまんま辿ってるわ。悪い予感に、鼓動が早くなるのが自分でもわかった。

馬を誕生日で贈るって――。

どんだけ貴族なの?

まあ、彼の場合は仕方ないのかしら。アルバートの設定を知っているから、気持ちがわからなくもない。

フェリクスはただの弟想いの兄なだけなのだ。

私はイリアスを勢いよく見上げた。


「イリアス様! フェリクス様に伝えてください! 絶対、弟さんを独りにしないでくださいって。間違っても馬に乗って独りで出かけるようなことはさせないでって伝えてください」


これでどれ程の効力を発揮するかわからないけれど、伝えないよりはマシなはず。

イリアスが私を不思議なものを見るかのように見つめる。


「何故?」


「理由は……聞かないでください」


ゲームのおかげで未来がわかるなんて言ったところで、頭のおかしいひと認定されてしまう。


「と、とにかく何でもです。必ず守ってと、伝えてください」


その時、授業が始まる鐘の音が鳴った。


「いけない! 授業に遅れちゃう! お願いしますね。それでは!」


私は足早にそこから去っていく。

これで杞憂に終わればいいと思った。

けれど、私の心配は数日後、見事に的中してしまったのである。





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