27、待ちあわせ
「お待たせ!」
私は校門前にいるユーリウスに駆け寄った。
校門脇で寄っかかりながら腕と足を組んでいる姿は、背が高いから様になっていて、遠くからでもすぐにわかった。女子生徒たちがユーリウスをちらちらと横目で見ながら通り過ぎていく。
「俺もさっき来たとこだから、気にしないで」
ユーリウスが腕と足を解く。
「どこ行こっか?」
「マルシェとかどうかな?」
「いいね、そうしよう」
「私とユーリウス、あ、ユーリウス様の馬車、どっちで移動する?」
ついつい向こうの世界にいた癖で、油断すると呼び捨てになってしまう。
気をつけなくちゃ。
ドロノア家とフェレール家の間には厳然とした家の格差があるのだ。
「ユーリウスって呼んでよ。堅苦しいの好きじゃないから」
「わかったわ」
平民出身らしいユーリウスの台詞に素直に頷く。
「呼びにくかったら――」
ユーリウスが背を屈めて、耳もとで囁く。
「ユーリスって呼んでもいいよ」
私の耳から顔を離して、私の顔を覗き込んで笑った。屈んで影がさしている彼の顔は、どこか艶めいて見える。
この世界で愛称を許すのは、とても親しい間柄だけだ。家族や恋人なんかに限られる。
色っぽい笑みに思わず心臓が高鳴り、後ずさる。
「な、な、な、そんなの駄目よ! ユーリウスでいいわ!」
イケメンの笑みの攻撃を至近距離で受けるこっちの身にもなってほしい!
「残念。カレンならいいのに。あ、俺もカレンって呼んでかまわないよね」
本当に調子いいんだから。私はちょっと頬を膨らませる。
「カーレン。機嫌治してよ。今日は全部奢るからさ」
「わかったわ。それで、どっちの馬車で行くの?」
「カレンの馬車で行こう。そのほうが安全だし」
「どうして?」
馬車に安全も危険もあるのだろうか。
私が首を傾げると、ユーリウスがウインクを送ってくる。
「俺の馬車だと、そのまま攫っちゃいそうだし」
ぐはっ。ユーリウスって、こんなに明るいキャラだっけ? もっと影があって、憂いのある感じだった気がするんだけど。
ユーリウスの端正な顔立ちとアンニュイな雰囲気が合わさって、母性本能がくすぐられぱっなしだった気がする。
私はイケメンの攻撃から戦線離脱して、顔を赤くして歩き出す。
これ以上かまっていたら、こっちの心臓が持たないわ。
「待ってよ、カレン」
ユーリウスが追いかけてくる。
私は無視して、自分の馬車に乗り込んだのだった。




