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第20話 メンテ完了

 日々の任務は相変わらずで、資源採取の雑用だ。


 昨日は森に、今日は鉱山へとあっちこっちへ駆り出されるので、日中は作業小屋にいる時間がかなり少ない。


 それでもボクたち三人は、任務が終われば疲れた体に鞭打って貴重なランプの灯りの元、CRF250Rを少しずつメンテした。


 何せ替えのパーツは一切ない。


 いくら燃料となるガソリンの代用品が見つかったところで、替えの利かないパーツに重大な損耗があったのならそこでジ・エンドだ。


 その点で言えば、タイヤやホイールやスポークなどの足回りにこれと言って大きな破損はなかったのは幸いだった。


 多少タイヤの空気が甘い気もするがこの際仕方がない。


 走行中タイヤから巻き上げられる泥や砂を防ぐ役目の前後のフェンダーは、割れたり欠けたりしていたのでいっその事取っ払ってしまう。


 シートは破れて中のクッション材がはみ出し変色していたので、布を二重に貼ってシートに縫い付け、どうにか最低限の座り心地を確保した。


 所々にこびりついた土や埃を丁寧に拭うと、エンジンやフレームもそれなりの輝きを取り戻し、見た目はそれなりに綺麗になった。


 エンジン左側のオイルキャップを外しザクレットの実で採れた潤滑油(オイル)をトポトポと流し込むと、ボクは額の汗を拭ってぷぅと一息吐いた。


「よし。……これで出来る事は全てやったよ」


「おお! これで完成か! やったなカズキ!」


「ヘルゲさん、ジェスター。この五日間、仕事終わりに付き合わせちゃって、本当にありがとう。二人にはどれだけお礼を言っても感謝の気持ちを言い表せないよ」


「……へへ。気にするなって。俺もCRF250R(コイツ)が走る姿を見てみたいしな。……って言うかさ、車輪が二つしかないけど……ホントに走るのか? だって倒れちゃうだろ。普通」


「うん……タイヤが二つしかないのは元からだから、大丈夫だけど。でも、ちゃんと走ってくれるかどうかは、ボクもやってみない事には分からないよ」


 ボクはマシンをチラリと見遣ると、心残りが胸を突く。


 整備工具一式があればもっとCRF250R(この子)を診てあげられるのに。


 エンジンや電気系統のメンテナンスは工具がなければどうにもならない。一応配線類などはチェックしたものの、はたしてちゃんと動いてくれるかどうか、実際の所はボクにも分からない。


 モトクロス競技にどっぷりハマれば当然の様に、整備やメンテナンスは自分自身で行うものだ。


 ボクももちろんその口で、暇を見つけてはマシンを保管していたおじいちゃん宅のガレージで顔と手をオイルまみれにしながら、カチャカチャマシンいじりをしていた経験と実績がある。


 それなのに。

 

 ———技術があるのに整備工具がない『モン・フェリヴィント』では、出来る事が限られすぎている。


 ……出来ない事を悔やんでも仕方ないね。


 それよりも、出来る事をやらないで悔やむのだけはしたくない。やるだけのことはやったんだ。


「いよいよじゃな。明日の朝、任務前に動くかどうか確かめてみようかの」


 ヘルゲの優しい瞳がボクを見た。


 メンテで手が離せないボクの代わりにヘルゲとジェスターが再び『風竜の瘡蓋(かさぶた)』まで行って、ガソリンもどきを採取してきてくれた。そのお陰でガソリンもどきはバケツ二杯分くらい溜まっている。


 二人の優しさが、孤独と不安で覆われていたボクの心に染み込んでくる。本当にこの二人に出会えて、ボクはよかったと心底思う。


 ———あとは、結果だ。


 ヘルゲとジェスターのためにも明日CRF250R(この子)が元気な姿で走ってくれる事を、ボクは柄にもなく神に祈った。

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