変わり変わる戦況
体が軽い。思考がまるで、雲ひとつない晴天のように冴え渡っている。
後ろ手に握っている剣を強く握りなおす。これさえあれば、最早何でもできそうな気さえする。
「待ってて…霞、志度さん…!」
洞窟内を全力で走りながら、二人の安否を考える。無名の勇者の話が本当なら、二人とも窮地に立っていてもおかしくない。
「……っ!」
そろそろ洞窟を抜けるはずだが、視界は真っ暗なままだ。
いつの間にか出口は岩で塞がれていた。戦闘の影響で崩壊したのだろうか…?
一瞬その事を考えたが、意味のない思考と結論付けて考える事をやめる。
今はただ、二人の元へ行く事だけを考えよう。
「はぁぁぁああっ!!!」
勢いそのままに、剣を振り回して岩を粉砕する。
視界が急に白く染まり、身体が僅かばかりの太陽光に優しく包まれる。
「霞!志度さん!!」
洞窟から抜けると同時に二人の名前を叫ぶ。
陽人の声を聞いた志度が、目と口を大きく開けたまま勢いよくこちらを見る。全身ボロボロで、もう既に満身創痍だった。
そして彼から少し離れたところに宙に飛んでいる化け物と、地面に伏している一人の影があった。
「霞!!!」
顔を見なくても分かる、霞だ。
霞はこの状況で指一つ動かさずに無防備に倒れていた。失神している可能性もあるが、どの道そんなこと考えている場合じゃない。
陽人は勢いを一瞬も緩める事なく化け物の元へ向かった。
「オッラァァァァァ!!!!!」
化け物と同じ目線になる様に跳び、真横に斬り飛ばす。
「ギャrrrrrァァァ?!」
化け物はまるで弾丸のように吹き飛び、近くの大木にめり込んだ。その衝撃で、重い音と共に枝葉が何十枚と舞い落ちる。
「志度さん、今からまた行けますか?」
地面に着地した陽人が、立ち上がりながら志度に問いかける。
「色々状況が変わり過ぎてよく分からないけど、付き合えるとこまで付き合うよ…!」
やっと状況に追いつき始めた志度が、刀を構えながら真顔で答える。
無理はしないで欲しい…と、無茶なお願いを心の中に仕舞いつつ、霞を護るように陽人も剣を化け物へ構えた。




