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ロスト・フェイカー  作者: ニシイパスコ
多様な命の在りかた
95/100

掛けなおす鍵、離れ始める日常

『…次また会う時も、今と同じであることを願っています』


そう言った時、彼女を閉じ込める結晶が一回り小さくなり、剣の柄の先が外に出てきた。


「…これを、引き抜けばいいんですか?」


陽人は何となく、そう言っている気がした。


『この剣は、きっと迷っている貴方を上手く導くと思います。それは貴方にとって…残酷で冷酷な、茨の道かもしれませんが』


「…残酷でもなんでも、この剣を取らないとあの化け物には勝てないんですよね…?」


陽人が正面から彼女を見据える。


『貴方が自分を犠牲にする覚悟があるならば、そうとも限らないでしょう』


つまり、陽人には最初から選択肢などなかったのだろう。生憎陽人は、まだ死ぬにはこの世界を知らなさすぎた。

決意した陽人は、無言で柄を握る。


「まだ死にたくはありません。知りたいことが大量にあるので」


静かに放った陽人のその返答に、彼女の顔が僅かに微笑んだような気がした。


「…っ!」


陽人が勢いよく剣を引き抜く。

結晶にヒビを走らせながら抜けていく剣は綺麗な白銀色で、神々しさすら感じた。

蒼い結晶の欠片が小さく飛び散り、地面にパラパラと落ちる。


『ありがとうございます。貴方のこれからの人生に、慈悲の加護がありますように』


彼女の少し嬉しそうな声が脳に響いた。二代に渡って継いできた想い…それを今の陽人に受け止められるとは正直思わない。でも、今は無理だとしても…今の彼女をどうしても無下にはしたくなかった。


「こちらこそ…。あなたにも、慈愛の雫があることを祈ります」


陽人はそう言い彼女に背を向け、化け物の元へ走り出した。

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