学年の説明 (今更)
(…暗いな)
見回せるほど人混みが晴れた頃、研究施設の様な場所に来ていた。
全体的に薄暗く、間接照明の様なもので足元を照らされているだけだった。
そこに等間隔でバスタブの様なものが置かれており、その中のほとんどに生徒が入っていた。
「あの、みんなが被ってるヘルメットって何ですか?」
近くの関係者らしき男性に聞いてみる。
全員頭に、フルフェイスのヘルメットみたいなものを被っているその光景は、不気味そのものだった。
「あれがVITですよ。…もしかして、あなたが転入生ですか?」
わぁ、すごい爽やかなイケメン。声までイケメン…。
「そ、そうですけど…どうして分かったんですか?」
「だってネクタイが黄色だったので……もしかして、ほとんど説明受けてない感じですか?」
少し同情した顔をしながら聞いてきた。
「え、まぁ…そうですね。場所と最低限の事だけ聞いて、教科書と制服渡されただけですね」
改めて考えるとこの学校って説明無さすぎない…?
「あ、あぁ…そうなんですね。私も同じ経験しましたよ…。ほんとご苦労様です、頑張ってください」
あ、ここに同じ経験者が…!
「簡単に説明しますと、この学校は学年毎にネクタイの色が変わるんです。今年なら…一年生は赤色、二年生は黄色、三年生は青色なんです。来年になると一年生は青色、二年生は赤色、三年生は黄色…そんな感じで色がローテーションして学年を区別しているんです」
なるほど。二年生でVITを見た事ないってことは去年この遭遇戦に参加していない、なら転校生だろう…って考えたのか。
…あの会話でそこまで考えられるってことはこの人頭いいですね。容姿も声もイケメンで頭良いって羨ましいんですが。
「とりあえず、そろそろ遭遇戦が始まりますし、空いてる機械の中に入ってください」
「あ、分かりました」
言われた通り、誰もいないバスタブの中に入る。これって機械なのか…。
「じゃあそのままゆっくり呼吸をしてください。VITを被せるので、全身の力を抜いて目を閉じてください」
言われた通りすると、少しずつ意識が薄れていくのを感じた。
そのまま意識をゆっくり手放すと、数秒にも、永遠にも思える暗闇を感じ、体が優しい何かに包まれる。
しばらくそのままでいると、目が自然に開いていく。
「ここが…仮想世界、VITの中…?」