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ロスト・フェイカー  作者: ニシイパスコ
多様な命の在りかた
88/100

熱く巡る血液は感情を凍らせる

「グルルァアアアアア!!!!」


小さくなった身体からは想像できないような叫びをあげる化け物。

耳を塞ぎたくなるような大音量。その絶叫をあげた直後、化け物は一直線にこちらに向かってきた。


「はっや…!?」


驚きつつも陽人は、ギリギリの所で回避に成功する。

先程までのゆっくりした速度とは比にならない。その機敏な動きに、危うく脚が持っていかれるところだった。


「陽人くん!油断しないで!!」


陽人と同じく回避できた志度が叫ぶ。

化け物は急に動きを止め、陽人の逃げた方に飛びかかってきた。


「なっ…ゴフッ!?」


直後陽人の腹部に走る鈍痛。ギリギリのところで失神せずに済んだが、吹き飛ばされたことで木と背中がぶつかり、身動きが取れなくなる。



「そんな…!?」


目の前には右手を伸ばした化け物。そして少し離れたところで、木に倒れ込む陽人。彼は虚な目を浮かべながら、小さく開いた口でか細い呼吸をするので精一杯の様子だった。


「うちの教え子を、よくやってくれたね…」


志度は刀を握り直し、化け物と真正面から向き合う。

逃げることなど許されない志度の身体に力が入る。体内を巡る血液が加速し、脈が速くなる。上昇する体温が筋肉をほぐし、鮮明な視界が必要最大限の情報を認識する。

志度はジャージのポケットから眼鏡を取り出し、耳に掛ける。すると彼の視界がより完全に鮮明になっていく。


「グルルル………」


低く唸りながらこちらを認識する化け物。志度はヤツを睨み返しながら、底冷えするような声で感情のない声を返した。


「来いよ。タダで済むとは思うなよ」

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