熱く巡る血液は感情を凍らせる
「グルルァアアアアア!!!!」
小さくなった身体からは想像できないような叫びをあげる化け物。
耳を塞ぎたくなるような大音量。その絶叫をあげた直後、化け物は一直線にこちらに向かってきた。
「はっや…!?」
驚きつつも陽人は、ギリギリの所で回避に成功する。
先程までのゆっくりした速度とは比にならない。その機敏な動きに、危うく脚が持っていかれるところだった。
「陽人くん!油断しないで!!」
陽人と同じく回避できた志度が叫ぶ。
化け物は急に動きを止め、陽人の逃げた方に飛びかかってきた。
「なっ…ゴフッ!?」
直後陽人の腹部に走る鈍痛。ギリギリのところで失神せずに済んだが、吹き飛ばされたことで木と背中がぶつかり、身動きが取れなくなる。
「そんな…!?」
目の前には右手を伸ばした化け物。そして少し離れたところで、木に倒れ込む陽人。彼は虚な目を浮かべながら、小さく開いた口でか細い呼吸をするので精一杯の様子だった。
「うちの教え子を、よくやってくれたね…」
志度は刀を握り直し、化け物と真正面から向き合う。
逃げることなど許されない志度の身体に力が入る。体内を巡る血液が加速し、脈が速くなる。上昇する体温が筋肉をほぐし、鮮明な視界が必要最大限の情報を認識する。
志度はジャージのポケットから眼鏡を取り出し、耳に掛ける。すると彼の視界がより完全に鮮明になっていく。
「グルルル………」
低く唸りながらこちらを認識する化け物。志度はヤツを睨み返しながら、底冷えするような声で感情のない声を返した。
「来いよ。タダで済むとは思うなよ」




