学校行事に怪しげな笑み
「来週から丸1週間を使って学園全体で実戦形式の遭遇戦をするんだよ」
「実戦形式の遭遇戦…?」
「まあ…分かりやすく言えば、バトルロワイヤルってやつかな?」
志度が人差し指を顔に近づけてキメ顔をしてきた。
なんだこの人、その行事楽しみなのか…?
思えばこの話を始めたあたりから声から楽しそうな気持ちが滲んでいた。
だが、この学校はそんな事できるほどの敷地を抱えているのだろうか…?
第3発展都市は大都会といえるほど建物が密集している。
それに地図で学校の敷地を見ても広いとも言えない。校舎がビルになっている分、むしろ普通の学校よりも狭いんじゃないのだろうか…?
「この学校、バトルロワイヤルとかできるほど敷地ありましたっけ?」
「あぁ、その辺は大丈夫だよ。うちの学校には人数分のVITがあるからね、現実の敷地なんて関係ないんだ」
「人数分のVIT、そんな馬鹿な…」
VITとは、自身の意識を設定された仮想世界に投影できる機械で、世間では最新技術の結晶とか言われている。
巷ではVITを1機買うのに家を2軒買える、なんて言われているのだが…それを人数分買えるほどの金額はどこから出ているのだろうか。
「本当だよ。VITの製作者とうちの学校は昔から絶対の信頼関係があるらしくてね、その関係で超格安でVITを譲ってもらってるんだ」
「なにをやったんですかこの学校…」
確かVITの製作者は無口で誰にも興味がないと聞いたことあるのだが、そんな人から絶対の信頼を得るって…。
「さあ?僕がここに赴任する前のことらしいし、そこまで深くは知らないからね」
「そ、そうですか…」
どうやらその辺りは秘密らしい。
「さあ、さっき呼び出した用件は全部終了!帰り際に呼び出してごめんね。もう帰って良いよ」
志度が軽く手を叩いて立ち上がる。陽人も椅子から立ち上がった。
そのまま扉の方に歩いて行くと、志度が扉の前で立ち止まって顔を少しだけこちらに向ける。
「来週、君と会えることを楽しみにしてるよ」
心が底冷えするような声だった。まるで首元にナイフを突きつけられているような。
「…あんたとだけは遭遇しないことを祈るよ」
陽人は、そう冷や汗まじりに返すしかなかった。
志度はフッと笑うと、そのまま教室から出ていった。