彼の殺意に応える彼女
「……向こう、始めたみたい」
「そうか、一方的な調教であいつの意思がへし折れなきゃいいがな」
桜の言葉で、向こうで何が始まったのか大体察する。
大方、志度が本気で教育をはじめたんだろう。陽人の精神が最後まで保つのを心の中で少しだけ願う。
「…こっちもそろそろ始めるか」
そう言い、背中に携えていた木刀を右手に構えて重心を前に落とす。
「パンドラは使わないの?」
「今は純粋に剣術を鍛えたい気分なんだ」
桜の質問に簡潔に答える霞。彼の表情を見ると、「それよりも早くしてくれ」と書いているようだった。
霞の言外の意思に応えるように、桜もその場で弓を構える。2人が軽く目を細めた瞬間、霞の方に何本もの矢が迫ってくる。
「もっと多く、頼む」
まるで朝飯前だと言わんばかりに、全ての矢のシャフト部分を木刀でへし折っていく。
「分かった。でもこれ以上は、射った後に矢を止めたりできないけど…」
桜の先程の射撃は、彼女にとって“射った後に止められる矢”の限界だった。
「それでいい、とにかく多く頼む。攻撃が当たっても容赦なく…俺を完全に殺すつもりで来てくれ」
そう言った霞の目は静かな闘志に燃えていた。どうやら遭遇戦の時の戦闘で、完全に火がついてしまっていたようだった。
霞がこうなったらテコでも動かない事を知っている桜は、複雑そうに顔を歪めた後冷たい目を彼に向けた。
「本当に…どうなっても知らないよ」
冷たいナイフを喉元に突きつけられたような緊張。それに怯える様子もなく、霞は桜を見据えたままこう言った。
「それでいい…奴らを殺すためにも」




