胡散臭さに出身の地
志度について行くと、どこかの空き教室に案内された。
中は普通の教室の大きさで、後方に椅子と机が固めて寄せられており、他にはなにも無い。
「あの、なんですか?」
後ろ手で教室の扉を閉めながら、こちらから聞いてみる。
「いや、ちょっと色々聞きたいことがあってね」
相変わらず優しい雰囲気が溢れている。
(やっぱり、怖いな…)
陽人はずっと、志度に対して不安を覚えていた。
なんだろうこの…底の見えない感じ。
「とりあえず、まあ…座りなよ。時間も長く取るつもりは無いから」
いつの間にか椅子を二脚、対面するように置いており、片方にはすでに志度が腰掛けていた。
陽人も素直に椅子に座る。
すると志度は一枚の紙を見せてきた。
この紙は確か…転入の時に提出した書類?
「えっと、とりあえず…出身地はここで本当?」
「そうですね。その紙に書いてる事は全部事実です」
「そっか、未発展土地…そうか」
陽人の回答に、顎に手を当ててウンウン唸る志度。
昔この国では大規模な紛争があったらしく、その影響で未だ荒廃している土地が点在している。
その場所は未発展土地と言われており、最も近い発展都市の管理局が管理しているらしいが、実際は放置されていることが多く、無法地帯になっている場所がほとんどだ。
未発展土地の出身となると、それだけで差別されてしまうので、偽の出身地を書くこともあるらしい。
また、そんな場所の出身となると両親が行方不明というのもよくある話だ。
「じゃあ保護者欄の苗字と日笠くんの苗字が違うのは…」
陽人も両親を失った1人だった。
しばらく無言でいると志度も察したのか、話題を変えてきた。
「あ、ちなみにだけど、来週からの行事について何か備えてることとかある?」
「え、来週何かあるんですか…?」