到着してもグダグダです
「さあ!到着だよ!」
4人が山の中を歩き始めて約3時間。小さな木造の小屋を前にして、先導していた志度が振り向いて陽人たちに言った。
そう、3時間。寝起きの人間と戻したばかりの人間を連れて険しい山道を3時間、だ。
「う“ぅ“…。やっと、着いたのか……?」
「もう無理…。一歩も動けない…」
ずっと後ろを歩いていた2人が、今にも倒れそうな音を上げる。
(やばい…また中身が上ってきた……)
「…教師どころか、もはや人として失格だろう。この悪魔が」
唯一まともな霞が、死にそうな2人を見て志度に睨みを効かせる。無言の陽人と桜には、それに同調する余裕も無かった。
「いやいや、吐きそうな人に殺意を向ける人もどうかと思うよ?ここは、お互いに非人道的ってことで手打ちにしよう?」
志度の言っている意味がまるで分からない。というか着いたんなら早く中で横にさせてくれ。
「何を訳の分からないことを…。俺を道連れにしたところで貴様の罪を拭うことにはならないだろうが」
「あ、認めた?霞くんも非人道的だって認めちゃった?やっぱり自覚あったんだ」
「一旦受け入れただけで、認めたとは言っていないだろうが。大体貴様は……」
2人がまたおかしな言い合いを始めたので、陽人と桜はのそのそとゾンビのように小屋のドアへと歩き出す。
「あぁ、2人とも。それ鍵掛かってるから。今から開けるよ」
アンデット二名に気付いた志度が、急いでジャージのポケットからよくある普通の鍵を出す。
そのままガチャリ開錠し、志度がドアを開けた直後に、2人がなだれ込むように中に入る。
「うわ、うわぁ!?」
「はぁ…まるで地獄絵図だな」
半分這うようにして部屋の奥に進んでいく陽人と桜。そしてその2人に押し倒されて玄関の床と熱いキスを交わす志度。
もうこの三人と関わりたくないと思い始めてきた霞だった。




