表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロスト・フェイカー  作者: ニシイパスコ
初めての合宿
54/100

もう全部これが悪いです

「と〜ちゃく!!」

校庭で言い合っていた時から約5時間。休憩を一度も挟まずにずっと運転をしていた志度が、元気にバスから降りて満面の笑みを浮かべる。

「おい…もう少しまともな運転はできないのか」

志度の後ろから霞が少し青い顔をしながら出てきた。ちなみにその車内では…

「うぅ…うぅぅ……。で、出る…朝のおにぎりが…おにぎりが…」

「すぅ…すぅ…。ん、んん……?」

真っ青な顔をして何かを我慢するように両手で口を塞ぐ陽人と、最後列で幸せそうに寝転がっている桜の姿があった。

(志度の野郎…もう先生とか付けるの絶対やめてやる…!!)

陽人は心の中で静かにそう誓った。

志度の運転は上手いのは上手いのだが…同乗者のことなど全く考えてないものだったのだ。

「陽人く〜ん、大丈夫?もし本当にヤバかったら目の前にある袋に出しちゃっていいよ〜?」

志度がそう言うが速いか、ひったくるように目の前にあった袋を取った陽人は、すぐに胃の中のものを全部出し始めた。

「貴様な…今すぐ免許返納してくれ。あいつのためにも」

バスの中で不快な嗚咽が聞こえる中、霞が懇願するように志度に言う。

「別に事故とか起こしてないし、そもそもこんな所で免許返納しちゃったら…歩いて帰るしかないよ?」

「じゃああの粗すぎる運転を何とかしろ!事故とか関係ねぇ!何だあの直角カーブは!60キロは出てたよな!?それに線ギリギリで急ブレーキ踏みまくるド阿呆がどこにいる!俺でも何度か酔いそうになったぞ!!」

「ご、ごめんごめん…。ハンドル握ったらつい楽しくなっちゃって…」

誰だ、こいつにバスを運転できるような免許を発行したやつは…。

霞がものすごい剣幕で志度に攻め寄っている中、陽人が死んだような顔を浮かべつつ、例の黄色いブツが入った袋を持ってバスから降りてきた。

「お、陽人くん。気分はどう?」

「死ね、死ね…死んでくれ」

陽人の口からはまるで呪詛のようにその言葉が流れるだけだった。

「陽人くんまでひどいなぁ…。そういや、何であそこまで我慢してたんだろう?苦しかったならすぐ吐いちゃえばよかったのに」

志度の頭にそんな疑問が浮かんだ。出発する前に一応そう言ったはずなんだけど…。

「俺が許可しなかった。あんな匂いが車内に充満したら、俺まで危なかったからな」

「元凶の僕が言うのも何だけど…相変わらず悪魔みたいな人だね」

陽人が袋に手を伸ばす度に殺意の目を向ける霞の図が思い浮かぶ。…うん、あとで陽人くんには何かしてあげよう。不憫でならない。

「元凶も悪魔も貴様だ。…そろそろ桜を起こしてくるか」

霞がそう言ってまたバスの中に向かった。もしかして、外の空気吸って酔いを覚ましてたのかな…?

2人がどこに行って、手持ち無沙汰になった志度は深呼吸でもしてみる。うん、街とは違って新緑の綺麗な空気だ。吸っていて気分が良い。

そんなことしていると、バスの中からは霞と、見るからに眠そうな桜が。その反対側の茂みからは、げっそりぐったりとしている陽人が姿を現した。

「ではみなさん!これから合宿地へと行きましょう!!!」

三人の姿を認めた志度は、目の前に堂々と広がる大きな山を指さして声を張り上げた。

「お前には人の心というものはないのか…」

「ん〜…あと3時間……」

「死ね、死ね、死ね、死ね、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね………」

それぞれ三者三様の反応で志度の方に向く。

(うん!みんな元気そうで何よりだ!!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ