平和で平凡な平日…でした
「で、俺はなんでこんなところに呼ばれたんですか?」
晴天の中、初夏の暑さを感じながら学校で青筋を立ててい笑顔の男が約1名。
閉会式から約1週間。学校はずっと休みのはずなのだが、陽人はなぜか志度に学校に来るように呼ばれていた。
一人暮らしの陽人にとって休日とは、日頃の溜まった家事や息抜き…買い出しなど、いくらあっても足りないくらい多くの需要を秘めている。
(この人…まじでしょうもなかったら絶対に顔面殴ってやる……)
その需要を消された…つまり今、陽人は相当怒っていた。
「いや〜…ほら、前に言ったじゃん。良い武器を取りに行こうって…」
陽人の怒りを感じたのか、志度は怯えながらそう言う。
「聞いてませんねぇ、そんなこと!」
「ヒッ!?」
“手に入る”とは聞いたが、取りに行くなんて一言も記憶にない。
志度の言葉に、圧の強い陽人が大声で言い返す。
「…貴様ら、一体何してるんだ」
「あの…どうしました?」
頭に手を当て、呆れたように呟く霞。その横で心配そうに2人を見る見慣れない女子が1人。
「えっと…あなたは?」
2人の声に我に帰った陽人は振り返り、女子生徒の方に質問を向ける。
隣にいる霞よりも15センチほど低い身長。長く緩い紫のツインテール。大きいジト目気味の目も髪と同じ色で染まっていた。
「秋月桜、です。個人戦では霞がお世話になりました」
そう言って桜は軽く頭を下げる。制服に包まれた彼女の胸にある、慎ましそうな何かが少し揺れた…気がしたが、彼女の隣からものすごい威圧を感じてすぐに目を逸らした。
秋月桜…遭遇戦の時は顔もシルエットも結局わからなかったので…初見で当然か。
「改めて、朝霧霞だ。前は世話になった」
桜の横で、霞が腕を伸ばして握手を求める。そういえばこの人と普通に話すの初めてだったっけ…。
「あぁ、俺は日笠陽人です。こっちこそ…世話になりました」
霞の手と陽人の手が重なる。
「桜くん。これが、男同士の深い情の始まりだよ…しかとその目に焼き付けとこう」
「これが…禁断の…」
陽人と霞のすぐ隣で2人の握手を熱い眼差しで感心する2人。
この2人もそういうタイプの輩だったか…。
「あの、今俺は志度先生に対して非常にイラついてるんですよねぇ…?」
「桜、ここで今から切り捨ててやろうか?」
2人して機嫌の悪さをこれでもかと主張させていく。その言葉に対して短い悲鳴を上げる声もまた2つ。
三つの制服と、ジャージにジーパンという雑な軽装の計4人は、しばらく静かな校舎でやいやい言い合っていた。




