あっという間の閉会式
「では只今より!今年度の個人遭遇戦の表彰式を始めたいと思います!」
次の日の朝10時ごろ。先程全ての戦闘が終わり、開会式と同じ場所で今こうして閉会式を執り行っている。
昨日の志度との会話の後、周夜と千里…そして二位決定戦を制した“秋月桜”と軽く挨拶をして、そのままお開きとなった。
家に帰って時計を見れば、気付けば17時。戦闘と、慣れないステージ、初対面の人とばかり喋っていたせいで、疲れが限界だった陽人は気付けばそのままベッドにダイブしていた。
そして問題の今日。なぜか志度が遭遇戦を辞退し、そのおかげで戦闘は霞の独壇場となった。
全員が一瞬で斬り伏せられる中、唯一恭弥が一番健闘していたが、その戦闘も悲しいことに1分ちょっとで霞が斬り伏せる結末となった。
その映像を陽人の隣で観ていた桜曰く、“素質は恭弥の方が上だけど、努力量も実践経験の桁も違いすぎる”らしい。霞は今までどんな人生を送ってきたのか。
そんなこんなで遭遇戦自体も1時間半ほどで終わった。運営側の周夜と千里が準備に忙しなく動いていたのは…霞のせいで間違いない。
「まず第三位!先程決まったので皆さんお分かりでしょう。圧倒的な実力で生徒の約半数をその剣にかけ、約90分という史上最短の時間で遭遇戦を終わらせました!“刹那”、朝霧霞さん!!」
台本もほぼない状態で千里が元気に紹介をし、その直後に部屋中に歓声が巻き上がる。
「では第二位の発表です!昨日の二位決定戦にて、“我らの悪魔”志度優との死闘を霞さんと共に制しました。“先見の狙撃手”秋月桜さん!!」
(我らの悪魔って…ひどい言われようだな)
でもまあ、あの志度の戦闘を見れば仕方ないのだろうか。トラウマって言われてた霞よりある意味殺人鬼してたし…。
「そして皆さんお待たせしました!第一位の発表です!!」
とうとう紹介の番が陽人に回ってきた。…今の段階でもうすでに歓声がすごいんですが。
「先程紹介させていただきました、桜さんの狙撃を素手で躱しきり…前回優勝者の菜季戸先輩を倒し、さらには霞さんに正面で対峙して、生徒の中で唯一勝利を飾った異例の転入生!日笠陽人さん!!!」
陽人の紹介が終わると同時に割れんばかりの歓声と拍手が送られる。
(嬉しいけど…めちゃくちゃ恥ずかしいんだが!?)
今までこうやって表に立つことがほぼ無かった陽人にとって、恥ずかしさや過度な緊張やらが織り混ざってよく分からない状態になっていた。
「では、御三方に表彰状とトロフィーを贈呈したいと思います!」
混乱している陽人などいざ知らず、千里の司会によって閉会式はどんどん進んでいく。
あぁ、時間ってこんなに早く流れるものだったっけ…。
「…陽人くん、優勝おめでとう!」
気付けば陽人の目の前には、笑顔で賞状を渡そうとしている千里の姿があった。
「あ、ありがとうございます…」
それを受け取り、彼女の背後で待っていた周夜からもトロフィーを受け取る。
「では、これにて閉会式を終わりたいと思います!皆さん、今回はお集まりいただき誠にありがとうございました!!」
千里が、まるでサーカスの幕引きの時のように深々と頭を下げる。周夜や桜、霞までも頭を下げていたので、陽人も急いで例に倣う。
そうして最後まで盛況で終わった閉会式には、しばらく盛大な拍手が送られていた。




