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ロスト・フェイカー  作者: ニシイパスコ
個人遭遇戦 終戦
47/100

猛獣と助けられた子犬

画面いっぱいに映されている先程の戦闘。それを見つめていた三人は、ずっと息を呑んでいた。

「……………」

「……………」

「……………」

画面を見つめる三人。たっぷり静寂が部屋を満たした後、それぞれの反応がポツリと出始める。

「え、…?」

「さっきの…一体、何が…?」

「…分かんない、何にも…」

志度が眼鏡をかけた瞬間、モニター越しにも感じた彼の纏う空気の変化。最後の最後に見せた2人の…流れるようなコンビネーション。

三人の激しいどんでん返しの連続の末、そこから姿を消したのは志度1人だけだった。


「…はぁ、はぁ……」

「はぁ……はっ、あぁ……」

2人してその場で倒れ込む。

霞の息はあまり乱れていなかったが、桜の方は酷く、たまに息が詰まったような声が聞こえる。

少し楽になった霞が桜の放った矢の方向を見た。そこに志度の姿は無く、ただ床が抉れた跡があるだけ。

「……桜、大丈夫か」

「はぁ…だ、大丈夫…。っ…はぁ、ちょっと、慣れてないことした」

霞の問いに軽く笑って答える。…こいつ、明らかに無理してるな。

「少しここで休んでおけ、今は無理すべき時じゃない」

場所もここは建物の屋上。下手に動くよりここでいた方が安全だろう。

それに恐らく、もう残っているのは…。

「えっと……」

ふと、視界の隅にあった屋上の出入り口のドアが重々しく開く。

「だ、誰…!?」

ドアの音に反応し、もう数本しか入っていない矢筒に腕を伸ばす桜。

「……」

彼女の動きを、霞が腕を伸ばして制止する。

「た、助けてくれてありがとうございます…」

申し訳なさそうに揺れる一筋の茶髪、女性のような華奢な体格と顔。見るからに敵意は無い。

「お前…武器はどうした」

敵意どころか、戸賀は武器を携えてなかった。

「あ、あはは…持ってても意味ないですよ、勝てるわけないんですから」

戸賀が力なく笑う。その言葉を聞いて霞の空気がほんの少しピリつく。

「霞、落ちついて。怒っても意味ないよ」

「………武器を持ってこい。どうせここはVITの中だ、命に怯える理由なんてない」

桜の言葉に、少し落ち着いた霞がそんなことを言い出す。

「は、はい!わかった…」

霞の威圧に畏まった戸賀が、急いで武器を持ってくる。

「桜、これ頼んだ」

「うん、分かった」

戸賀が大剣を桜に任せる。落ち着いていた桜がそれを受け取り、その代わり自身の弓と矢を差し出した。

霞は無言でそれを受け取り、戸賀を待つ。

「…お待たせしました」

少し待っていると、またドアが開いて戸賀が姿を見せる。その手には長い、凹凸の木製の杖が持たれていた。

「全力でこいよ。じゃねえと、リアルで殺ってやる」

「……はい」

霞の脅しじみた低い声。それを聞いた戸賀は、覚悟を決めたような目をしていた。

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