教育の時間です
「くたばれ…!」
土の塊を壊しながら、志度の身体を横薙ぎに吹き飛ばそうとする。
「くたばらないですよ、簡単には」
志度はすぐに軽くしゃがみ、ついでに霞の足を回し蹴る。
「いつもいつも…ふざけやがって!」
体勢が崩れた霞もそのまま縦に回転し、志度の顔に無理矢理剣を振り回す。
「お、そこまでは想定外ですね」
だが、霞のその意表を突いた攻撃でさえも、志度を傷つけることはなかった。
「貴様……!」
「ふう…。もし最初に遭ったのが霞くんだったら、僕はここで脱落していましたね」
志度と霞の大剣の間に、何か赤い障壁が。
その障壁は志度を守っており、彼は余裕そうに目を閉じてゆっくり立ち上がる。
「……何人その手に掛けた」
「…さあ?当ててみてください」
霞の質問に応じる気は全くないのか、にっこりとはぐらかす。
「………!」
それが霞の癪に触れたのか、今度は無言で志度の首を刈ろうとする。
「乱暴すぎるのも考えものだね…もう少し冷静に…っ!?」
また赤い障壁で霞の剣を受け止めたが、志度の余裕もそこまで長くは続かなかった。
突如後ろに吹き飛ぶ志度の身体。空中で何とか体勢を立て直して着地したが、志度の顔には焦りと驚愕で満ちていた。
「見えない矢…それに音も存在も認識できない…。どうい、う!?」
またも吹き飛ぶ身体。どうやら対志度用に作った戦法なのか、対策一つできない。
「いいですねぇ…。三校の生徒であるならば…これくらいの化けの皮、あって然るべきですよねぇ」
今度は冷静に着地できた志度は、大きく表情を緩ませた。
「ちっ、バーサーカーが」
「何とでも言ってください。私は生徒の成長を見るのが仕事であり、生き甲斐なんです」
そう言いながら、ズボンのポケットから長方形のグレーの袋を取り出す。
「…やっとか」
その動作を見た霞が、待っていたと言わんばかりの表情をする。
「えぇ…。暫くぶりですが、本気で教育をしてあげましょう。…覚悟はいいかい?」
袋から黒縁のメガネを取り出し、それをゆっくりと掛ける。
…志度のその目は、真剣そのものになっていた。




