なんなんだこの二人
「次!次の場所に行きますよ!!」
「え、次?次はどこいくんですか?」
こういうイジられ方に慣れていないのか、まだ少しムキになっている周夜が廊下に出ていく。
ちなみに千里は
「私は別に?シューくんがそういう関係になりたいなら別に、付き合ってあげても良いけど…?でもシューくんの方にそんな脈アリな感じないし、私も別にそこまで恋愛に興味とかないし?シューくんがもし、どうしてもっていうならホントに別に良いけど…?」
よほど深刻なダメージだったのか、何か小声でボソボソと呪詛のように言葉を並べていた。
(いやもう…こんなになってるなら早く付き合えよ…!)
これが両片思いというやつなのか、どうしてこんなになるまで2人とも放っておいたのか…。
様々な感想が胸の中に渦巻く中…彼女の尊厳と地位のためにも、陽人は千里を置いて部屋を出た。
廊下に出て、大きな扉の反対方向を少し歩いていると、周夜が大声でこちらに走ってきていた。
「日笠さーん!!!置いていってしまってすいませーん!!!」
1人で結構な距離を先導していたのか、止まる頃には膝に手をつき、ゼェゼェと息を切らしていた。
「す、すいません。はぁはぁ…。ついムキになって、周りが見えてませんでした」
「い、いや…俺も茶化して悪かったと言いますか…。気にしてないので大丈夫ですよ」
もちろん千里のことは言わない。彼女の想いをここで晒してしまうほど、陽人もデリカシーのない男ではなかった。
周夜はしばらく下を向いて息を切らしていたが、呼吸がある程度整ったところで陽人に向き合う。
「いえ、こちらももうあまり気にしてないので…あれ、千里はどこですか?」
当然というべきか、まだここに千里の姿はない。疑問に思った周夜は彼女を探そうと元いた部屋に戻ろうとしたが、
「あー!大丈夫じゃないですかね!ほら、きっと後から追ってきますよ!うん!なので俺たちは先に次の場所に行きましょう!!」
彼女が自身の想いと決着をつけるまで、たとえ事故だとしてもバレるわけにはいかない!
そう思い両手を広げ、とにかく大声で周夜の行く手を阻む。
(いくら何でも露骨すぎるだろ俺!なんでこれで止められると思ったんだよ!!)
「いや、だとしても千里が少し可哀想に思うので…通してもらっても良いですか」
(ですよねぇ!!!)
そうやって少しの間その場で見合っていると、陽人の背後からすっかり聞き慣れた声が聞こえた。
「抑えきれない想いを周夜に告白し、応えのハグを求める陽人。周夜も彼に想いを寄せていたが、男同士の禁じられた恋愛という壁に苦悩し、未だ素直になれずにいた。どうしてこの世界はこんなに無じょぶぅぅ!!!??」
後ろからの声に、両手を広げたまま勢いよく後ろを振り向いたのだが、その手が丁度語っていた千里の頬にクリーンヒットした。
「あ、ごめん」
右手の甲に軽い痛みを覚えつつ、それでも女子の…恋する乙女の顔を殴った罪悪感で、陽人は謝った。
「うぅ…ひどい、ひどいよぉ陽人くん…。そんなに私のことが嫌いなの…?」
その場に座り込んでオヨヨと泣き崩れる千里。そんな想い人の姿を見た周夜は
「日笠さん、ナイスです」
あろうことか、殴った陽人に向けて親指を立てていた。




