終わっても止まらない疲れ
次に陽人が目を覚ましたのは、VITの機械の中だった。
「お帰りなさい、とっても良い戦いでした!」
来た時とは違って、とても明るい室内。思っていた以上に広い室内、そして間隣から響くとても元気な声。
「わっ!?……あなたは?」
驚いた陽人は声のした方を向いたが、目に映った光景に思考がすべて吹き飛んだ。
「私は陰森千里です!開会式の時に司会をしていた者です!」
一本一本が高級なシルク糸のようにキラキラと輝き、それが腰まで伸びた銀色の髪。大きな乳白色をした宝石のような瞳。
着崩さずに真面目に着用している学校指定の制服は、彼女のワガママなスタイルに合わせて膨らんだり萎んだりしている。
「あぁ…あの時の人ですか」
開会式の司会の生徒と言えば、陽人の記憶にも新しい。
苗字の“陰”という字が似つかない、とても元気で可愛らしい人だった。
「そうですそうです!覚えて下さってたんですか!?ありがとうございます!!」
彼女の元気さは声だけでは収まらないのか、千里はその場で軽く跳ねながら、向日葵のような笑顔がそこに咲く。
「いや〜…日笠さん!いや、陽人さんと呼ばせてください!陽人さん、優勝おめでとうございます!!全身が痺れるようなとても熱い戦い、ありがとうございました!!!」
「え、あ、え…。あ、ありがとうございます…?」
(あ、これあれだ。遠巻きに見る分には良いけど、直接話してたら疲れるやつだ)
もうすでに彼女の元気すぎる姿に、陽人は軽く疲れてきていた。
「え、優勝…ですか?」
「そうですよ!!あの霞さんが本気を出すほどの一進一退の激しい攻防!一瞬のミスが許されないような2人の互角の鬩ぎ合い!その姿に全観戦者が息を呑む中、陽人さんのあの思い切った捨て身の一撃!決着が付いた時なんてもう…歓声の嵐だったんですよ!!」
「あ、あははは……」
上半身をこちらに乗り出しつつこちらに詰め寄ってくる千里。熱弁される自分の姿に恥ずかしさを覚えながら、もはや陽人は苦笑いをするしかなかった。
「ちょっと千里、テンション上がりすぎ。ボリューム下げて」
「いて!?」
千里のテンションに陽人が困っていると、背後から誰かが彼女の頭を叩いていた。
「ちょっとシューちゃん、叩かないでよぉ…」
「ならもっと落ち着いて。日笠さんが困ってるよ」
「うぅ…ぁい」
軽く叩かれただけで、千里が小さく丸まった。
「お騒がせしてすいません、僕は陽向周夜って言います。先程は千里が迷惑かけてすいません」
「え、あぁ…大丈夫ですよ。…でも、止めてくれてありがとうございます」
とても礼儀正しい人だった。キリッとした翡翠色の目に、スッと通った鼻筋。綺麗に手入れされているだろう金髪に囲まれた顔は、まるで絵に描いたようなイケメンだった。他にもシワ一つない制服、そして全身から漂う清潔感からこの上ない好青年である事が伺える。
(何このめちゃくちゃな美男美女…一緒にいるだけで緊張するんだけど…?)




