遭遇戦 その果てにある勝利
「お前…そろそろいい加減にしろよ…!?」
男の弄ぶような刀に、陽人もそろそろ我慢の限界だった。
「どうした、こんなに刀が当たるんだぞ。凄いじゃないか」
男が明らかに、馬鹿にするような笑みを浮かべる。
その言動は、今の陽人を完全に怒らせるには十分だった。
「ふざけるんじゃ……ねぇぇよぉぉぉ!!!」
陽人を襲う男の刀を勢いよく弾き飛ばし、身体に纏わせていた魔力が渦を巻く。
「おぉ…面白い」
男は、これを待っていたと言わんばかりに笑みをこぼす。
「とことん馬鹿にしやがって…絶対に後悔させてやる…!」
陽人の周りを渦巻いている魔力は少しずつ大きくなり、空間が歪んでいるように感じる。
ブチギレた陽人が構えを崩す。両手で握っていた刀を荒っぽく右手に持ち、ゆっくりと地面を蹴る。
足跡がくっきり残る程強く地面を蹴った陽人の身体は、あっという間に男の目の前に移動していた。
「やっと…八つ当たりができそうだ」
男は大きく目を見開き、陽人に向かって刀を振るう。
ガキィィィン、と辺りを大音量が襲う。
それでも陽人の勢いを押し殺せてなかったか、男の前髪が大きくなびいていた。
そこから始まった激しい剣戟。先程とは違い、男の方も手を抜いている様子はなかった。
刀が交わる度に、鋭い金属音が耳に響く。
5分ほど経っただろうか、その長い剣戟を制したのは、意外にも陽人の方だった
「これは…予想以上だな」
払われた刀のせいで右手を伸ばしながら、感嘆したような声を漏らす。
「これで…終わりだぁぁ!!!」
男のほうに跳びかかりつつ、身体を捻ってとどめを刺す。
何かしようと身を構える男だったが、諦めたのか、そのまま陽人に無防備な身体を晒した。
「いっけぇぇぇぇ!!!」
陽人の全力の一撃は男の首を貫通し、刺さった刀はそのまま首を左に引き裂いた。
男から刀が離れ、宙に浮いていた陽人の身体は、そのまま男を押し倒すように地面に落ちていく。
「はぁ、はぁ…やった、のか…?」
意識が朦朧とし、激しい目眩に襲われる。更に全身が重すぎて指一本動かせる気がしない。
そのまま勝ち負けも何も分からないまま、陽人の意識は遠のいていった。




