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ロスト・フェイカー  作者: ニシイパスコ
個人遭遇戦一位決定戦
20/100

後出しじゃんけんの必勝法

「面白いねぇ…僕もちょっと本気出そうかなぁ!」

途切れる事ない矢の猛襲、蛇のように襲いかかる男の攻撃を、志度は避け続けていた。

「そんな舐めた動きで勝てると思っているのか?」

「あいにく勝ち負けに興味なんて無いんだ。二人と遊べるのが幸せでね」

「ほざけ、殺すぞ」

殺意に染まった目。大きく開いたその瞳には、志度の楽しそうな顔が写っていた。

(わぁ、我ながら酷い顔だ)

普段ならまず見せない、狂気じみたその笑顔に志度本人も気味悪く感じた。

気持ち速くなった男の剣に、何度か刀を交え始める。

狙撃にも対応しなければいけないので、どうにも攻めに転じることができない。

(相方が桜くんなのが厄介だなぁ…。それぞれタイマンなら強気を張れるんだけど)

志度の中で“霞”と“桜”のペアは最も避けたい人選だった。

二人とも学年は2年生ではあるものの、3年生のトップ勢に引けを取らない実力の持ち主。

特に桜の“後衛”としての強さは他を許さない。まるで相方の思考を読んでいるかのような完璧な支援、牽制、決めの一手こそ、彼女の真骨頂であり、彼女が輝き続ける最たる理由だろう。

(しかもこの二人の呼吸…これは無理にでも攻めないとかなぁ?)

ちょうど目の前で男が大剣を振りかざす。

先程なら躱していただろうその攻撃を弾き返し、追撃するために一歩前に踏み込んだ。

「…バカが」

「なっ…!?」

その焦りの一歩が失敗だった。

ニヤリと笑った男の背後。どこからか現れた“それ”は可視化出来るほどの空気を纏い、志度の眼前を覆い尽くした。

「ほんと、切り札ってやつはどうしてこんなに厄介なんだろうねぇ…!」

志度が腰を沈ませ、全身の力を一瞬だけ抜いた。

支えを無くした身体は前に崩れ、人形のように倒れていく。

「クッソが!」

その動きを見た男がすぐに距離を取るため、何度も後ろに飛び続ける。

志度の周りを数えられないほどの矢が覆っていたが、恐らく何も意味を成さないだろう。

「…そんな顔しないでよ霞くん、桜くんも合わせて飛ばしてあげるから」

剣山のように矢が刺さった背中を起こし、志度は酷く醜い顔で笑っていた。

ーーー数瞬後、2人の居た部屋が音を立てて崩壊するのを遠くから見ていた少女は、いつの間にか真っ暗な世界に落とされていった。

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