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第38話 死地


 放たれた閃光。それはメルクのどんな場所からでも確認できる。


 教会付近で指揮を続けているアルドも、西門から出た住民達も、西端の壁上に居るスミスとノエルも、その輝きを目にした。

 皆が希望を期待を歓声を持って、その光を見た。


 止まらぬ放射。

 圧倒的な熱量。


 この魔人を決して許さぬ。そんなメルク住民達の怒りが、その魔法には込められている。


 「ーーーーーーーーーーーーは、」


 閃光が降り注ぐ中、その影は段々と小さくなっていく。

 メッカの体は熱に溶け、蒸発する。しかし、それでも辛うじて体を保ち続ける。


 「くっそ! 何て抵抗力だ!! エミーさん! 魔力が持ちません!!」

 「それでも持たせなさい! これがダメなら後は無いのよ!! アンタらも! 魔力を注ぎなさい!!」


 熱風の中、魔法の起点である6人を守る前衛達も、手をかざして魔力を送る。

 メッカを焼き尽くすまで、この魔法を止めるわけにはいかないのだ。


 「ーーーーーーーーううーーーーー」


 メッカの体が崩れ始める。だが彼は全開で魔力を漲らせ、体を保とうとしている。


 「ーーーーおのれーーーーここまでとはーーーー!」


 無残にも体はどんどん蒸発していく。そして巨大だった影は跡形もなく消えていった。


 やがて、熱線は細くなり、一本の線になって空に消えた。

 魔法陣も消え去り、光の柱も共に消えた。


 メルクに再び静寂な夜が戻る。

 メッカのいた場所は地面が焼け焦げ、白いもやが立ち込めている。


 「はーーあ! 魔力が尽きた!」

 「はぁはぁ……これ以上は、もう動けねぇ……!」


 魔力を送り続けた冒険者達は既に疲れ果てている。何人かは地べたに転がり、気を失っていた。


 エミーも魔力を使い果たし、膝をついていた。限界を絞り出し、これ以上の魔法の行使は出来ない。

 しかし、その表情に影がかかる。


 「うそ、でしょ……!?」


 彼の視線の先には、黒く焼け焦げた地面と、真っ赤に変色したメッカの姿があった。


 「惜しかったな……あと一手あれば私の敗北だった。下調べを怠らなかった事が功を奏したようだ……」


 高い城壁以上に巨大だったメッカは3メートルほどに縮んでいる。だが魔力を使い果たした冒険者たちにとっては絶望でしかない。

 今や、前衛を張っていた戦士職でさえ、魔力を使い果たし、立つこともままならないのだ。


 「下調べって……あんた知ってたの? 『メルク・グリッター』を……?」

 「当然だ。冒険者ギルドには何度も出入りしたからな。貴様達の魔力を測定したが、我が分体を消し去るほどの魔力量だった……。だが、消せるのは分体が限界。私の本体を消し去る程ではない。だからこそ、侵攻は成功すると踏んで計画を実行したのだ……」

 「そ、そんな……」

 「俺たち、死ぬのか……」


 冒険者たちは肩を落とす。焦燥感と絶望が同時に彼らの意識を支配する。


 しかし


 「諦めんじゃないわよ!!!!!」


 エミーが吠えた。


 「あんたらそれでも冒険者なの!? こんな事で諦めていいわけないでしょ!!! こいつを仕留めなきゃ、この街の住人が、あんたらの家族が! 友人が! 恋人が! もっと悲惨な目に遭うって分からないの!?」


 エミーは歯を食いしばって立ち上がった。

 彼の足は震えている。限界であることは、誰の目から見ても明らかだった。

 しかし、そんな彼の姿を見て、立ち上がれない者など、メルクには居ない。


 エミーに続いて一人、また一人とフラフラとしながらもしっかりと立つ。


 「何があっても諦めんな!!!! ここはアタシたちの故郷で、家でしょう!!! だったら、何が何でも立ちなさい!!!」


 冒険者たちに再び力が宿る。

 剣を構え、杖をにぎる。

 メッカを睨み、覚悟を決める。


 「さあ、闘うわよ!!!!!!」


 紛れもなく死地。しかし、それでも、彼らは走った。

 それぞれの大切なもののために。


 そして、エミーの檄はやや離れた壁上にもしっかりと届いていた。

 まるで、その声に突き動かされるように、レンが再び目を覚ます。


◎読んでいただき誠にありがとうございます!!◎


大変恐縮ではございますが〜

少しでも本作を気に入ってくださった方

面白いと思った方


評価とブックマークを頂けると大変嬉しいです


作者の日々の励みにもなりますので

お手数ではございますが

どうか、よろしくお願い申し上げます。

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