第36話 第二ラウンド
「『爆炎唱歌』 さあ、住民のみなさん、早くお逃げなさい!」
エミーが呪文を唱えると、西の大門から爆発音がいくつも響いた。
大門は跡形もなく崩れ去り、横に大きく開かれる。
歓喜の声と共に、住民達は雪崩れ込んだため、先頭の冒険者達はその整理に苦心した。
そして、エミーは巨大スライム、メッカに向き直り、冒険者達に告げる。
「さあて♡ これで思う存分暴れられるわよ、アンタ達!!!」
「「「おおおおおおおおーーーー!!!!」」」
その奮起を消し去るように、巨大スライムは触腕をいくつも伸ばす。
月光の中、数十もの触腕に不気味な照りが出ている。
「……貴様らの生存は予想外だったが、それならそれで、貴様らごとこの街を破壊し尽くすだけだ」
「俺たちが居て、それができるか!! デカブツ!!」
大剣を携えた大男、ガッドが屋根の上から叫ぶ。
それに呼応するように、他の冒険者達も口々に声をあげた。
「もうアンタは十分に壊しすぎたわよ……。それこそ、メルクの怒りを買うくらいにね」
エミーは静かな怒りを燃やしている。
今、第二ラウンドが始まろうとしていた。
◇
「おい!! レン!! 起きろよ……!!!」
メッカの体内から助け出された修道女達とレンは壁上で手当てを受けていた。
助け出された修道女達は回復魔法を受けると意識を取り戻し、兵士達に安全な場所へ運ばれて行った。
そんな中、魔法の効かないレンだけは全く意識が戻らない。
「レン様! お願いですから起きてください!!」
ノエルの声が虚しく響く。
「くそ! とにかくノエル! レンを運ぶから手伝ってくれ!」
「わ、分かりました!」
スミスは力なく項垂れるレンを背負おうとした。
ノエルもそれを手伝おうと屈んだ瞬間、空中に幾つもの閃光が弾けた。
冒険者の魔法攻撃だ。
それを見て、スミスは戦場となっている下に目をやった。
既に冒険者達とスライムが戦いが始まっている。
サリーの防壁が崩れた時、スミスは彼女を助け出そうと急いで降りようとしていた。
しかし、冒険者達の登場によって事態は好転した。
そのおかげで、サリーも彼女が守ろうとした住民達も救われたのだ。
冒険者達に感謝しつつ、スミスはレンの体を背負い、立ち上がる。
その瞬間、青い花火が空に散った。
「あれは……!」
「随分派手な攻撃だな……」
スミスの反応とは対照的にノエルは青ざめている。
「スミス様! レン様を寝かせて抑えててください! 飛ばされないように!」
「え、どういう事だ……!?」
「あの花火はメルク住民なら誰もが知る警告です! たぶん、とんでもない突風がきますよ!!」
「なら、早く逃げないと!」
「そんな猶予はありません! すぐに魔法が……」
その瞬間、輝く5本の柱がメルクを照らした。
「ーーっ、いけません! とにかく飛ばされないように身をかがめて下さい!!」
「わ、分かったよ!」
レンを石の床に再び寝かせ、スミスとノエルはレンを押さえつけた。
「一体何が起こるっていうんだ!」
スミスの困惑が夜に溶けた。
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