表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

74/198

第26話 人質


レンは偽のグラム神父と握手を交わした瞬間気がついた。

彼の中指、薬指、小指の三指が危険信号を発している。


グラム神父の手の触感は紛れもなく人間のもの。

しかし、その打感は全く異なるものだった。


レンの鍛え抜かれた三指の感覚はその記憶を呼び起こす。

グラム神父の手は、まるでスライムを打った時と同じような響き方と構造だったのだ。


流石のレンも一度目は自身の感覚を疑った。

だが、もしスライムだったとすれば、あってはならない事が起こっている。


そんな疑念を払拭する意味でも、神父呼び止める風を装って、背を向ける神父の肩に打震を放ったのだ。


そして、その打震によって、レンは全てを悟った。

このスライムの体内に感じた”記憶の鍵”、いつからか神父に化けている事、そして信仰の集まるこの場所で何をしようとしているのか。


「お前……! ここで何をするつもりだ……!」


レンの手には魔人領への門を開くための鍵が握られていた。

一方、ドロドロに溶け出したメッカは冷静な声をどこからか発する。


「やはり勇者だからか……? しかし、私の変化魔法は魔王ですら見抜けない精度のはず……道理に合わない……」


彼はレンを無視するかのように一人呟く。


「おい! レン……! なんだそいつ!」

「分からない! でも間違いなくスライムだ! 記憶の鍵を持ってる!!」


叫ぶスミスにレンが叫び返すと、仲間達の緊張が高まった。


メッカはそれを感じ取り、思案を中止。

ひとまずは自身を貫くレンの腕ごと彼を取り込んでしまおうと、その赤い体をアメーバのように広げた。


その瞬間、レンは竜歩で後退しようと踵を踏む。


だがしかし、粘性のあるメッカの体がレンを捉えて離さない。

スライムに対して、レンの武術は尽くが無力だ。


だが、彼を覆いつくすその前に、火炎魔法の一閃がレンの頬を掠めてメッカを貫いた。

着弾点から発火し、メッカとレンを切り離すように炸裂する。


レンは急いで飛び退き、サリーに礼を言った。


「ありがとう、サリー!」

「バカ! あんま無茶すんな……!」


杖を担いでサリーは再び魔力を収縮させる。


「これは良くないな……。勇者とそれに次ぐ危険人物の魔法学士か……全く、不運としか言いようがないな……」


メッカは赤い体液を空中に浮遊させ、自らを捻るような螺旋状に変化する。

彼にとっては紛れもないハプニングであったが、その口調はいかにも冷静。


一方のレン達も、戦闘態勢である。


「まずはその鍵を返してもらう。そして、開門だ」

「させないわよ!!」


サリーの杖から小さな炎が巻き立つ。

その渦をメッカに向けて放つ瞬間、アルドが手を出し、サリーを制した。


「待て! サリー!」

「何よ……って!?」


アルドの指差した先に、全員の目が釘付けになる。


そこには、赤いスライムの粘液に包まれたノエルの姿があった。

長椅子の影からゆっくりと浮遊し、これみよがしに掲げられている。


「意図は伝わったかな……? 人間はこういう手に弱い」

「き、貴様……!!」


アルドは怒りに声を震わせた。


◎読んでいただき誠にありがとうございます!!◎


大変恐縮ではございますが〜

少しでも本作を気に入ってくださった方

面白いと思った方


評価とブックマークを頂けると大変嬉しいです


作者の日々の励みにもなりますので

お手数ではございますが

どうか、よろしくお願い申し上げます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ