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第69話 激突

 「待って!! レン!! アンタだけは逃げなさい!!!」

 

 サリーが鉄格子から叫ぶ。

 騎士だけならまだしも、王国最強の称号”魔女”まで、相手取るなど不可能だ。


 魔力の無いレンが無残に殺される姿が、サリーの脳裏を過ぎる。


 「レン! 彼女の言う通りだ! 君なら隙を見て逃げられる!!」

 

 アルドもまた、彼の身を案じて叫んだ。

 しかし、レンの背中は動かない。


 二人には分かっていた。


 どんなに逃げろと叫ぼうと、レンは仲間を見捨てられない。

 まして、自分だけ逃げ遂せるなど、そもそも選択肢になは存在しないのだ。

 彼はそういう男だ。


 分かっていた上でなお、それでも二人は叫び続けた。

 祈りにも近い二人の声は、無言の背中が受け止め続けた。


 やがて、応えようとしないレンに代わり、魔女アズドラが告げる。


 「先に言っておくがサリー、アルド王子。二人の戦いに余計な手助けはするでないぞ?」

 「それは貴様もだ、魔女!!!!! そこで大人しく傍観していろ!!!!!!」


 騎士ガロードが振り向き、アズドラへ罵声のように怒鳴った。

 だが、魔女は豪快に笑い飛ばした。


 「だっはっはっは!! 全く、誰がこの舞台を用意したと思っておる。安心せい、元よりそのつもりじゃ」


 それだけ聞くと、ガロードは剣の柄に手をかけた。

 レンもまた、構えをとる。


 両者の間合いはおよそ二間。

 

 サリーとアルドは静かに息を飲んだ。


 もはや彼を止められない。止めようがない。

 もはや二人には、レンの無事を祈る事しか出来なかった。


 静止。


 レンもガロードも構えをとったまま動かない。


 静寂が礼拝堂を支配する。

 

 両者の足元のタイルは、ただ白く。


 魔女アズドラの笑みを含んだ視線は、ただ虚しく。

 レンの背後を見るしかできない二人の声は、ただ遠く。


 全てを置いてきぼりにして、この瞬間、この空間は、レンとガロードの二人だけ。
















 静寂を破ったのはガロードだった。


 常人には見えぬ一閃を、レンの首筋目掛けて飛ばす。


 だが、その0.3秒前。


 レンは首に走る殺気を捉え、深く身をかがめた。

 そして剣閃が空を切った瞬間、踵で力む。


 地面を深く踏み、駆けた。ガロードへ目掛けて、真っ直ぐに。

 

 ガロードに驚きはない。

 敵は攻撃を予知するように動く。不意打ちなど通用しない。

 それは闘技場で戦った彼自身がよく知っている。


 だからこそ、レンを殺す方法はただ一つ。

 正面からの打ち合いだ。


 剣を抜き放ち、ガロードも駆けた。

 両者の間合いは一瞬にして縮まる。


 走り抜けざまに細身の剣を右手で振るう。

 刃の間合いに入ったレンを、真横から両断せんと迫った。

 そこには俊敏生向上のバフも合わさり、その速度は常人を遥かに超える。


 だがレンは止まらない。

 避けようともしない。

 

 更に踏み込み、刃の間合いの内側へ入る。

 そして、柄を握ったガロードの右手を自身の左肘で打ち払った。


 超近間。

 

 それは、レンにとって最高の攻撃範囲。

 左で打ち払った勢いで体を回転、右肘が連動してガロードのこめかみを撃ち抜いた。


 騎士の上体が崩れるが、倒れず踏みとどまった。


 その手応えに、レンは瞬時に思い至る。

 

 (硬い感触。防壁魔法か)


 咄嗟に今のは浅いと判断し、レンは左拳を握り込む。

 

 次なる一手は穿打。

 防御の上から打撃を浸透させる口伝技だ。

 そのために下半身に溜めを作る。


 しかし、ガロードの動きが一瞬早かった。

 

 騎士は地面を蹴り、大きく飛び上がった。

 体は、レンの手が届かぬ遥か上空、礼拝堂の高い天井に着く勢いだ。


 レンは騎士を見上げた。

 魔力を纏い、片手に備えた剣の眩しさに目を細める。


 『アルペウス神よ!! 我が剣に輝きを!!』

 「まずい!!」


 その輝きは、闘技場で見た。

 閃光のように伸びる剣だ。

 

 現状最悪の攻撃が脳裏によぎり、レンは踵を踏む。


 (あの魔法は単発で終わるはず。一つ避けてしまえばどうってこと……)


 そう思った瞬間だった。

 レンの周囲を殺意が取り巻き、ゾクリと背筋を震わせた。


 気付いた時には遅かった。

 いくつもの雨の如き閃光が降り注いだ。


ご拝読ありがとうございます!


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