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第38話 変態王子②


 「ハッハッハッhハッッッッハッッハッハh…………!!!」


 ウルド王子の興奮は収まる様子がない。

 地面に額を擦り付けながら、合わせた両手に乗ったハンカチに顔を埋めている。


 「……あの、アルド……これ、何……?」


 ウルド王子の異様に青ざめきったレンは聞かずにはいられなかった。


 「ああ、兄上はな……生粋の変態だ」

 「それは見て分かるよ」


 聞きたいのはそういう事では……まあ、そういう事なんだが。

 レンとしてはもう少し詳細に説明して欲しかった。


 「兄上は昔からサリーの大ファンでな……会う度にサリーに対する熱い想いを聞かされたものさ。どうやら、彼女が研究所で働き出す前からずっと求婚していたらしい……」

 「……で、当のサリーは……」

 「兄の性質を知っていたんだろうね、何度も断られてる」


 二人がサリーへ視線を向けると、ノエルの胸に顔を埋めて泣き崩れていた。

 

 (……可哀想に……)


 レンは素直にそう思った。

 これは後でフォローが必要だな、とも。


 「はあはあはあはあはあはあはあはあはあ、んく、ごきゅ。はあはあ……」


 明らかに何かを飲み込んだ音に、その場の全員が凍りついた。

 

 場の空気を気にした様子はなく、少し息を弾ませながらウルド王子は立ち上がった。

 必死になって嗅いでいたソックスはどこへやったのか、彼は両手で膝の埃を払いつつアルドへ向き直った。


 「……ふぅ。全く、仕方のない弟だ。いいだろう、あの鍵は譲るよ。ただし、あと一つだけ検証させてくれ」


 まるで今の醜態が無かったかのように至って冷静。

 その態度の落差に、レン達は不審感を抱いた。


 「あの……ソックスはどこへ……?」


 特に近くにいたレンは我慢できずに聞いてしまった。


 「さて、おかげでじっくり研究する時間が無くなってしまったよ。鍵を渡す前に、君の話を聞かせてもらおうか」


 ウルド王子とは、しっかり目が合っている。

 しかし何故か、レンの質問はスルーされた。


 その瞳をよく見ると、まだ真っ黒に濁っている。

 流石のレンも泥沼に足を突っ込むような事はしたくない。


 「…………はい」


 これ以上は危険と判断し、素直に従うことにしたのだった。



 「君の話を要約すると、記憶の鍵とは魔界への転移の門を開く鍵であり、君の記憶も封印されている、という訳だね」

 「はい。そうなります」

 「ふむ……今までの鍵はどこに?」

 「僕の記憶が戻ると灰になってしまいました」


 それを聞いてウルド王子は肩までかかる金の長髪を弄りながら、目を閉じた。どうやら何か考え込んでいるようだ。

 少なくとも、その思慮深く優雅な仕草には先ほどの変態性は微塵も感じられない。

 

 この時、サリーを除く全員が同じ事を思った。


 (((((この人が変態じゃなければいい王子なのに!))))


 一方のサリーはと言うと、ノエルの胸に顔を埋めていた。

 大切なソックスを失って先ほどまで泣いていた彼女だったが、ウルド王子の変態行為に悲しみ以上の嫌悪感を覚え、ソックスへの未練は断ち切れたのだった。

 その代わり、女として大切な何かを失った気がしたサリーは、すぐ近くにあった母性の塊に埋もれる事で心の安定を図っていた。


 数分の沈黙の後、やがて王子は口を開いた。

 

 「……検証する必要があるな」

 「へ? なにがです?」

 「ええい、こっちだ! 説明は計器を見ながらしてあげよう!」


 痺れを切らしたようにウルド王子は”記憶の鍵”が浮かぶ部屋へレンを引っ張った。

 そうして着くと、王子は扉の右横にあるベルに手をかざす。


 「この部屋はこの鍵専用に作った解析装置でね。鍵に隠された術式や魔力経路を詳細に分析できる」

 

 説明した途端、扉の横の無地の壁がゆっくりと透けてくる。

 やがて部屋の内部が見渡せるようになると、異世界の文字列がとんでもないスピードで壁に流れ出した。


 「これは魔人の術式だ。しかも君の証言通りなら、人類の魔法では未だ未解明の記憶を操作する術式が組み込まれている。まさに未知の宝庫だ!」

 「は、はぁ……」

 

 術式もなにも、この世界の文字が読めないレンには何のことだかさっぱりだ。

 

 「そしてだ! これまでの鍵は、君が記憶を取り戻した事で灰と化した! ということは、どういう事か分かるだろう!?」

 「すみません! 全く分かりません!!」


 レンが叫ぶと、王子はもどかしそうに足を踏む。

 しかしレンもまた、もどかしい気持ちで一杯だ。理解したい気持ちがあるからこそ、しっかり聞かなければならない。


 「つまりだ! この”記憶の鍵”にとって君の記憶は重要な器官、炉心とも言えるという事さ!」

 「……炉心……そうか、確かに転移の門を開いた後でも鍵は存在し続けたました……そして、記憶が戻ると鍵は灰になった……」

 「その通り! そして、君の記憶が鍵から抜け去り、術式が成立しなくなった結果、消し炭になったのだろう」


 レンは深く頷いた。ウルド王子の推測は非常に的を得ている気がする。

 しかし、王子の口が少しずつ速くなっていく。


 「では、その心臓部を君の記憶だと仮定しよう。ああ全く、君のおかげでこの鍵のブラックボックスは判明しそうだが、更なる課題が生まれたわけだ。本当にありがとう! で、その課題というのが”記憶”というマナでもオドでもなく、目に見えず、触れることも出来ない物をどうやって操作し、物理的な存在である鍵へと封じたのかだ! そんな疑問を解決してくれるのがこの装置であり君自身。まずはこの装置に入ってもらい、君と鍵に魔力経路を繋げ、回路として設定し、繋いだ回路と術式を君の@+**・して、〜〜〜で、====を###したい。君はただ魔力¥$%#を$%#$#してくれれば#*$%#だ」


 途中まで頷いて聞いていたが、唐突に出てきた専門用語の嵐にレンは戸惑った。 


 「ん? すみません王子、よく分からないのでもう少し噛み砕いて……」

 

 しかし、当の王子はすっかりヒートアップしている。もはや、レンの言葉は耳に入っていない。

 それでも何とか理解に努めようとレンは耳をそばだてた。


 「私がこの装置の”#$$%%$#から君へ&%&$&#を$%’#状態になる。そしてまた#&%の54番には$#を差し込む。だから君は#%$&が限界に達するまで耐えてもらう。そして##’$が臨界になると$%&#は$%&で$%&&&%$&$%&$%&#&%$%&#$&$&%$#$%$#%$#%$%$&%大丈夫%#%$&$&$&&$&%&$&$%$&%$%&&%#%&$&%$&#%#$%#%&&%#&%#%&%#&$&$&%$$&$&$&%$%$&%&$&%%&’$死ぬほど&%%%’&%痛みじゃない(&&&$&’%(%&&#%$’&(’%(&((’)%)%&%’$(%()&’00%$%’’()’&#%#%’)&’$&&$’&半々かな’)’(#&%%%0)0’)00)=)=()’’($##$%(00)=)=0(’(’&(%%’$$%U&(00)(≒(0%%((_*_*??*?*??_?* ね、簡単だろ?」


 満足そうに微笑む王子を見て、レンは後ろへ叫ぶ。


 「専門家ーー!!! お願い助けてーー!!」


 速攻で理解を放り投げ、サリーに助けを求めたのだった。

読んでいただきありがとうございます。

面白いと思って下されば

ブクマ、ご評価、ご感想いただければ嬉しいです。


創作の活力になりますので

どうか、よろしくお願い致します!!

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