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第35話 レンの謎

 「兄上、この者こそが私が闘技場から連れ出し、ここまで旅を共にして来た元勇者、レンです」


 アルドに紹介され跪いていたレンが見上げると、ウルド王子は変わらず微笑を浮かべている。


 「これはこれは! やはり君が元勇者だったか! 変わった魔法だね。この私が気が付けないとは!」


 ウルド王子からすれば、先ほどまでレンの顔は一般的な男子生徒としか見えなかった。

 しかし、顔を上げた彼は紛れもなく指名手配犯元勇者レンになっている。 

 

 レンの認識阻害魔法をこっそりと解いたサリーは思わず俯いた。


 一方王子はレンの顔をまじまじと見つめている。

 それはサリーがたまにやる、観察するような視線。


 「本当に不思議な魔法だ。変身とも変化とも違う系統……術者は君かい?」 

 「えっとそれはサ「ゴホン!!!!!」」


 突然咳払いをしたのは言うまでもなくサリー。

 ニコニコとした表情でありながら、その大きくなった黒目が伝えてくる。


 (しゃべったら、殺す)


 それもそうか、とレンは納得した。

 認識阻害魔法を明かしてしまえば、ノエルやスミス、はもとよりサリーの存在を気取られかねない。

 

 ここに来る前からウルド王子を恐れていたサリーにとっても、それだけはあってはならない。


 「……ぼ、僕にも分かりません!」


 殺気の篭った視線が背中に刺さるのを感じつつ、レンは誤魔化した。


 「分からない?? 分からないってどう言う事だい?」


 全然誤魔化せなかった。

 むしろウルド王子の好奇心が湧き水のように溢れている。


 元よりレンの誤魔化しが下手過ぎたのもあるのだが。


 「え〜〜、それはその……」

 「ゴホン!!!!! オホン!!!!!」


 今度は怒気が篭った咳払いが聞こえてくる。

 しかし、目の前の王子は好奇心で瞳を蘭々と輝かせている。


 「兄上、この魔法は我らの旅にはなくてはならない秘技なのです。例え兄上であろうと、お話しする訳にはいきません」

 「う〜〜ん、そうかい、それなら仕方ないか……なら、別の機会に教えてくれ」

 「もちろんです。またザグラムに来た時には必ずお教えするとお約束しましょう」


 「ゴホン!!!!!!!!!(意訳:二度と来るかバカ!!!!)」


 ともあれアルドが入って上手くフォローしてくれたお陰で話が逸れる。


 「まあ、その魔法はおいおい観察するとして、私からも一つ。元勇者くんに見てもらいたい物があるんだ」

 「僕にですか……?」

 「ああ、君にだ。どうぞこっちへ。ああ、君たちも来て構わないよ」


 王子はアルドとレンの後ろで座っていた三人にも手招きした。


 そして立ち上がり、王子の後を列になって歩いた。

 いくつかの書棚を通り過ぎる道すがら、サリーがアルドの袖をつい、と引っ張りヒソヒソと話している。


 (ねえアルド、入る前に渡したソックス返してよ。あれが無くても協力してくれそうじゃない)

 (いや、交渉材料としてまだとっておきたい。ここを出たら返すと約束するよ)

 (本当でしょうね!? あのソックス、気に入ってるんだから絶対返してよ!?)


 「さ、ここだ。……どうしたんだい? アルド?」

 「い、いえ! なにも!」


 王子が立ち止まったのは、古めかしい木製の扉の前だった。

 黄金色に輝くドアノブに手をかけると、王子は漠然と扉を見つめる一行を振り向いた。


 「君が見て来たこれまでの事件……それらには神側、そして魔王軍側、双方の思惑が見え隠れしていたと思う」

 「ええ、確かに」


 すると、王子はレンへ視線を移した。


 「だが数なくとも、それら全てに元勇者レン、君という存在が大きく関わっている」

 「……?」


 言われてレンは小首を傾げた。

 その反応を見て、ウルド王子も疑問を投げかけた。


 「おや、君はそうは思わないのかい? では何故、神は君だけを殺そうとしている? 何故魔王軍は君の記憶が封印された鍵を使っている?」


 それは確かな謎だった。

 これまでの旅を経ても、全く分かっていない。


 「渦中の本人がせっかく来てくれたんだ。これを見て、是非話を聞かせて欲しい。君にとっても謎を解くヒントくらいにはなるだろう」


 王子はそう言うと、ドアノブを回す。

 ガチリ、という音と共にゆっくりと扉が開かれ、中に溢れる光が漏れ出す。

 

 その眩く輝く真っ白な空間は一同の足に濃い影を作る。

 そして、その空間の中心に浮かんでいるものを見て、レンは思わず叫んだ。


 「記憶の鍵!!」


 赤い宝石がはめられた古めかしい鍵が、その空間にポツンと浮かんでいた。

読んでいただきありがとうございます。

面白いと思って下されば

ブクマ、ご評価、ご感想いただければ嬉しいです。


創作の活力になりますので

どうか、よろしくお願い致します!!

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