第25話 ヒント②
「順を追って話そう」
「是非! お願いします!」
アルドが朗々と語り出す。
彼は先ほどまで、濡れた子犬のように落ち込んでいたハズだが、元の勢いを取り戻しつつあった。
「神の不完全性を証明する一つ目、”神は神器を失い無益となった元勇者レンを殺そうとした”という事実だ」
「ええ。本当に許せません」
ノエルが口の端をギュッと紡いだ。
「私も同意見だ。だがね、重要なのはわざわざ殺そうとしたという事だよ」
「……というと、どういう事でしょうか?」
「ノエルも知っているだろう? 勇者とは魔法が使えない。神器を失った勇者とは、子供にも劣ってしまうという事を」
目を瞑り、ノエルは思考を巡らせた。
「…………! アルド様、変です! か弱いレン様をどうして神様が殺したがるのでしょう!?」
「その通り。完全無欠の神が、一体どうして、不完全の極みともいえる勇者レンを殺したがるのか? それこそがサリーの言う一つ目のヒントだ!!」
「……アンタら、ここにレンが居なくて良かったわね……」
肩を竦めたサリーにアルドは向き直った。
「そこでもう一つのヒントが出てくる。そうだろ、サリー?」
「ええ。アンタも察しはついてるみたいね」
「え? え? 何ですか? 私、まだ何か気づいてないですか?」
二人の確信めいた雰囲気について行けず、ノエルは再び首を傾げた。
「分かってなくていいのよ、ノエル。だって貴女、”エルフの隠れ里”の時には居なかったもの」
「……エルフの隠れ里って、確か皆さんがメルクに来る前に立ち寄ったというあの?」
「ああ。あの場所こそが、神の不完全性を証明するもう一つのヒントだ」
アルドの脳は回転を止めない。むしろ、彼が言葉を発するたびに加速していく。
「あの土地には、不思議な加護が備わっていた。外界の害意ある者を遮断し、内部のエルフ達を守り続ける加護が」
「はい、以前お聞きしましたね。その加護を破って盗賊団に襲われたと……」
エルフの里を覆っていた霧の加護。
一度は破られはしたものの、サリーの手によって修繕されている。
「ええ、その加護ね。術式は組み直せたけど、その力の根元は明らかに魔力ではなかったわ。言ってしまえば、レンが昔使っていた神器と同質の力よ」
「という事は、アルペウス神がその里に加護を?」
「いいやノエル、里に加護を与えた神は全く別の存在だ。エルフ達の語った神話と我々の神話とでは相違点が多すぎた。そして、ここからが重要なのだが、彼らの信仰する神は消えてしまったらしい」
「き、消えたのすか!?」
「ええ、確かにそう言ってたわね。どういう経緯で消えたのかは伝わっていないそうだけど、里を隠す加護だけは残ったそうよ。エルフ達を守るようにね」
大きく瞬きをしながら、ノエルは合点がいったように頷いた。
「なるほど。それが二つ目のヒント、ですね。エルフさんが信仰していた神様が消えたというのなら、消す方法がある。そういう事ですね!!」
「ああ、その通りだ。すまないサリー。気落ちして大切な事を忘れてしまっていたようだ」
「いいのよ。それよりも、早く片付けてごはん食べるわよ」
サリーはそう言って、いそいそと本を棚に戻していく。
アルドもまた、テキパキと手を動かした。
そして、アルドの後ろ姿を見て、ノエルは胸を撫で下ろした。
「……それにしても、エルフさん達は違う信仰を持っていたんですね。メルクの図書館には亜人に関する書物は無かったので驚きです!」
「ああ。恐らくそれも検閲対象なんだろうな……」
アルドの心に何かが引っ掛かった。
言葉には出来ないもやもやとした何かが。
だがそれは、ノエルの一言で明確になる。
「そうですよね……残念です。私、”亜人さん達の歴史”も知ってみたいです!」
ノエルの言葉を聞いた瞬間、アルドとサリーは同時に叫んだ。
「「それだーー!!!!」」
「……へ?」
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