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第23話 難航


 レン達が地下迷宮から脱出した頃、アルド、サリーは学院図書館で頭を抱えていた。

 

 「無いわ……それらしい、記述……」

 「こちらもだ……! 全く、これだけの蔵書があるのに、どうして……」


 二人が座る長机には何十冊もの本が山となっている。

 そんな雰囲気にめげず、傍からノエルが元気に声をかけた。

 

 「お二人とも! 新しい書物を持ってきました〜〜!」

 

 彼女はカートに乗せた本の山を机に移すと、二人が読み漁った本をカートに乗せて元の本棚へ戻しに行く。

 先ほどからその繰り返しだった。 


 「はぁーー。えっと、”古代神話の奇跡 神の伝えた魔法論”……違うわね」

 「”雷の真実 神話に学ぶ自然現象” 違うな……」


 神、神、神、神!!


 書棚にある本は、どれもこれも神を賞賛するばかり。


 アルドとサリーは目次を読んでその大まかな内容を見る。そうして欲しい情報があるかどうかを判断していく。

 しかし、これといって目星い本は一冊も上がらない。

 

 ここに来てから既に何時間も経過していため、サリーもアルドも、重たい疲労を感じていた。


 「…………ッあーーーーーーーー!!!」

 「うわ! どうしたサリー!?」


 本を持ったまま、サリーが突然奇声を発した。

 アルドは思わず、持っていた本を落としてしまう。


 「おなかすいた!!!!!」

 「……そ、そうか……」


 何か見つけたのかと、アルドは一瞬期待を寄せたが、結局は、”いつものやつ”だ。


 とはいえ、既に夕刻。他の生徒達も帰り支度を始めている。

 学院図書館は夜更まで開いているものの、学舎の門限がある生徒がいつまでも滞在するには不自然である。

 

 「…………今日はここまでとしよう」

 「賛成! よし、片すわよ!」


 先ほどまで気怠そうに本に目を落としていたはずのサリー。アルドのセリフを聞いた途端、テキパキと動き出した。


 アルドは「余力があるならもう少し……」と、言いかけたが思い止まった。

 腹ぺこ状態の彼女から恨みを買うことだけは避けるべきだと判断したのだ。


 「あれ? もうお終いですか!?」


 空になったカート引いて、ノエルがやって来る。


 「ああ、今日はここまでだ。すまないが明日も手伝ってくれるかい?」

 「ええ! もちろんです!」


 今のアルドにはノエルの笑顔が眩しかった。


 断じて、サリーとの落差が大きいと言っているのではない。

 ただ、疲れ切ったアルドの心に、ノエルの元気な笑みが染み渡ったのは確かだ。


 決して、サリーと比較して清楚だとか、お淑やかとか、優しいとか思っているわけでは無い。

 ノエルに比べてサリーは大雑把だし、我儘だし、品がない、などと思っているわけでも無い。決して。

 

 アルドは自分にそう言い聞かせた。


 「アレ? なんか失礼な事考えてるぅーー?」


 サリーの真顔が目の前に現れた。アルドが今し方落とした本を片手に拾い、じっとりと見つめてくる。

 そして、彼女の真っ黒い瞳には焦るアルドの姿が写し出されていた。


 「いや、断じてそんな事は! 全然っ!」

 「そう。ならいいんだけど……」


 彼女には獣のような勘の良さもあるため、ピリつく空腹時には特に注意が必要である。


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