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第21話 地下迷宮②

 

 広間には闇が深く広がっており、彼らが落ちてきた天井の穴から注ぐ光だけが頼りだ。

 僅かな光に照らされて、辛うじて見える通路からは不気味さが漂ってくる。


 今は褐色の少女が3人を運べるだけの魔力が練り上がるのを待っているが、奥から漂う闇にも全力で警戒していた。

 

 ーーゴトリ……!


 その瞬間、四人とも音の鳴った方へ顔を向ける。


 音は前方、広間の奥に見える通路の暗闇からだ。


 「……い、いま……」

 「……うん、したね」


 青ざめた表情で、リースが身を縮ませる。

 庇うかのように、メラルが彼女の前に出た。


 「なんか来るな……! リース、お前は杖が無いんだから下がってろ」

 「ううう……怪我人のクセに何言ってんにょよ……」

 「ビビってんじゃねぇか! 無理すんな!」


 ーーごとり、ごとり……


 深淵で蠢くような音は、段々と、確実にこちらへ近づいてくる。

 さらに、音の数も次第に増えていく。


 「間違いない、この足音は亡者だ。しかも結構な大人数みたい」

 「お前、前に潜ってたんだろ!? その時はどのくらい居た?」

 「……四、五百ってところかな。あの時は仲間がいたから何とかなったけど……」

 「……へっ! なら問題ねぇ!」


 メラルは包帯を脱ぎ去り、声を張り上げる。

 

 「俺が居れば百人力! いや、三百人力だぜ!!」

 「だとしても数が足りないね」

 「じゃあ、千人力だ!!!」


 相対していた時は恐ろしい男だが、隣に並び立つその勇姿は何とも頼もしい。 

 だが、包帯を取った彼の右腕を見ると、未だ赤く腫れ上がっていた。


 「……無理はしないでね。君の強化魔法は体に負担がかかりすぎる」

 「壊した張本人に言われたかねえよ!……だが、そうだろうな! なんせ、サリーの姉御が組んだ術式だ、俺がそう簡単に扱えるモンでもねぇ……!」

 「………………ん?」


 聴き慣れた名前を耳にして、レンは動きを止める。


 「今なんて……」

 「来やがった!! おい行くぞ!!」


 メラルが叫んだその先には、黒い人型が群れをなしていた。

 今まさに、こちらへゆっくりと行進している。 


 もはや問い直す時間はない。


 「くっ……! しょうがない!」


 地面を蹴り、二人は亡者達がやって来る通路へ駆けた。


 相手は多数。こちらは二人。

 なるべく数の理を殺すため、幅の狭い通路で闘う方が有利だと判断したためだ。


 通路に溢れる亡者達。彼らはそれぞれが茶色く錆び付いた刃物を手に持ち、引きずり、掲げながら得物へと歩を進める。


 その腐臭とおぞましさにレンは内心、肝を冷やした。

 それを知ってか知らずか、亡者達は津波のように二人へ襲いかかる。


 「この!」


 レンの飛び足刀が前列の亡者をなぎ倒す。


 「オラァ!!」


 メラルの豪腕が三体の亡者を同時に吹き飛ばす。


 威力はレンを遥かに上回るが、メラルの戦術に防御は無い。故に、攻撃の度に無防備になった背中や肩を切りつけられていく。

 それでもメラルは構わず豪腕を振るい続けた。 


 ーードゴン!!!!


 メラルに掴み飛ばされた亡者が壁に突き刺さる。


 「まだまだぁーー!!」

 「……流石だね、メラル! 僕も負けてられない……!」


 レンも一体ずつ確実に仕留めていく。

 

 しかし、ガムシャラに通路へ深入りしたメラルの周囲には既に亡者が溢れている。

 錆び付いた刃物が次々に彼を襲う。


 「オラァーー!!!!!」


 メラルが亡者を掴み、プロペラのように何度も振り回すと、周囲に居た亡者達も粉砕していく。

 そして運よくメラルの猛攻を抜けてきた亡者はレンが確実に屠っていく。

 

 「オラァああああああああ!!!!!!!」


 そうしてメラルの雄叫びにも慣れた頃、背後から声がかかる。


 「準備完了よ〜〜! お待ちど!!」

 「あんたら! 逃げるわよぉ!!」


 レンとメラルは手を止め、わらわらと追いすがる亡者を押し除ける。


 リースと褐色の少女が待つ広場へと全力で駆けた。既に少女二人は宙に浮き始めている。


 「メラル!」

 「ああ!」


 褐色の少女に支えられたリースがメラルへ手を伸ばす。

 そしてしっかりと握られると、今度はメラルがレンへ腕を伸ばした。レンが壊したばかりの痛む方の腕である。


 「でも、メラル!」

 「いいから急げ! 奴らが来てるぞ!」

 「……ごめん!」


 躊躇いつつも、レンは痛々しい腕にしがみついた。


 「……っ! ……全ッ然、平気だ!!」

 「みんな居るね! さあ、上がるよぉ〜〜!!!」


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