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第20話 地下迷宮①


 「ありがとう。貴方が下敷きになってくれたおかげで助かったわ」

 「いや、いいんだ。無事で何よりだよ」


 あわや命の危機という落下からリースを救ったのは、浮遊魔法でも老朽化した床でもなかったようだ。

 落下し地面に激突する瞬間、レンはリースを守るように落ちたのだ。


 リースの身代わりになるため、”人明流 円転受身”は使えない。

 ならせめて、致命傷にならない程度の怪我は覚悟でガードを固めたのだった。


 そのお陰か、レンは細かい切り傷を負った程度で済んだ。


 「それと……ごめんなさい! 貴方を追いかけまわしたりして! メラルはただ貴方と話したがっていただけなの……」

 「そうだったんだ! 凄い睨まれたから、僕はてっきりまた喧嘩になるかと思って……」


 そう言って、レンとリースはメラルへ顔を向ける。


 「言っておくが、俺は謝らねぇぞ! 最初に逃げ出したのはお前だ!!」


 そう言いつつも、彼は頬を指で掻く。ほんの少しバツが悪そうである。

 だがレンは、そんな彼に怒りをぶつける訳でもなく、ただ笑顔を向けて言った。


 「そうだね、ゴメン!」

 「……!!!」


 何が気に入らなかったのか、レンの素っ気ない対応にメラルは静かに青筋を立てた。


 「ここは……地下迷宮かな……?」

 「めいきゅ〜〜?」


 レンの呟きに、褐色の少女が反応した。

 

 「うん、多分そうだ。実は昔入った事があってね。入り口は全然違う場所にあったけど、この学園にも繋がっていたんだね……」

 「て、言う事は立ち入り禁止だったのは生徒がここに入らないようにするため?」

 

 リースがレンの背に付いた砂埃を払い落とす。

 レンは「ありがとう」と言いつつ辺りを見回した。


 周囲には黄土色の石材で出来た壁が広がるばかりである。

 

 「……ここは、確か……」


 何かを思い出そうと、壁に手を当ててよく観察する。

 その面には無数の傷跡。

 刃、爆破、槌……いくつもの武器がこの壁を擦っていったと推察できる。


 「……すぐにここから出た方がいいかも」

 「何でだ? ここに何があるんだ?」


 メラルの声がレンの背後で響いた。

 その声は、この広間に続く通路へと反響していく。


 「昔ここに潜った時、数え切れない程の亡者に襲われた。そいつらは武器を持っててね、倒してもすぐに蘇る」

 「……そりゃあ、良くないな……さっさと出ちまおう」


 流石のメラルも一滴の冷や汗をかいた。

 

 「リース、行けるか!?」

 「ごめん、杖は上の階にあるみたいで……」


 申し訳なさそうに呟くと、リースとメラルは褐色の少女を見た。

 彼女はニッコリと大きな笑みを作ると、魔力が輝き、周囲に光が満ちる。


 「ちょっとお待ちぃ〜〜! 3人も担ぐには魔力の練りが足りねぇんじゃい!」


 職人口調でふざける彼女は魔力の輝きに照らされて、笑顔がくっきりと見える。

 その笑みはレンの脳裏に引っかかる。


 (……この娘、どこかで見たような……)


 そうしてレンが見入っていると、褐色の少女は視線に気が付く。

 

 「……見惚れてるぅ、私の美しさも罪だわ……」

 「集中できねぇってよ」

 「あ、ごめん」


 少女の謎言語をメラルが訳してくれた。


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