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第12話 ヒートアップ

 レンの猛攻を受けてなお、メラルは立ち続けている。

 

 「……っく。やっぱりそう簡単には倒れてくれないよね……」

 「当たり前だ……! あの程度の攻撃、大した事なかったぜ!!」


 そう言って悠然と腕を組んだメラルだが、その心情は言葉とは間反対だった。


 (やっべぇぇぇぇ!!!! なんて攻撃だ!!! と、とにかく呼吸を……少しでも回復を!!!)


 メラル自身、未だかつて受けたことのないダメージを感じていた。

 横隔膜が縮み上がり、睾丸から内臓向かって得体の知れない苦痛が全身を波打っている。


 彼が打たれた箇所は上から眉間、人中、下顎、心臓、あばら、章門(腹部左側にある経穴)、金的。

 これら一つ一つは、軽く押されるだけでも悶絶するレベルの急所だ。


 作者自身、さる武道の修練過程で経験したことがある。

 適切に急所を抑えられた時、電撃をくらったかのように体は硬直し、あまりの痛みに思考が完全に停止する。そして気が付くと天井を見上げているのだ。

 

 そんな攻撃を幾度も打たれたにも関わらず、倒れぬどころか意識を保っているメラルは凄まじい。

 絶大な自己強化魔法も一因ではあるが、何よりも彼自身の誇り高い精神がダウンを許さなかった。


 どの格闘技にも稀にいる。己の精神力、根性、プライドを武器にするファイターが。

 メラルもまた、そんな闘士の一人である。 

 

 「……へへっ、お前、かなり強いな」

 「そっちこそ。あんなに打ち込んで倒れないなんて、びっくりだよ」


 レンはそれ以上侵攻せず、メラルの瞳を真っ直ぐ見つめた。


 「……一つ聞きたいんだけど」 

 「……なんだ?」


 互いの視線が交差する。

 そしてレンは短く言った。

 

 「何で、下がらないんだ」

 

 メラルのように遠距離での魔法を使うのであれば、相手との距離は一定に保つのが定石だ。

 レンの攻撃手段は近距離しかない。であれば、離れた所から先ほどの豪腕を振るっていればいいはず。


 だが、メラルという男はそうしなかった。

 ゆっくりと距離を詰めてくるレンに対して、一歩たりとも下がろうとはしない。それどころか、レンの猛攻の全てを防御せずに真っ向から受けきった。


 レンには何となく察しがついていた。だからこそ、聞いてみたくなったのだ。


 「ーーッハ! 分かってんだろ、お前なら!」

 「……まあね」

 

 構えたまま、メラルは拳を立てて見せる。


 「遠距離の拳は逃げ回る魔法使いを仕留める用! 俺本来の戦い方は、正々堂々、真正面の殴り合い、全力全身のぶつけ合いだ!! ただ、俺の土俵に乗ってくれる奴はそうそう居ない。だからよ、堂々と近づいてきたお前から逃げるなんて真似はしねぇよ!!」

 「フフッ。そんなところだろうと思ってたよ……なら、僕もこの闘いに後悔はしない。今ある全てを使ってやる!!!」


 再び競技場が熱を帯びる。

 相対する両者の鼓動のように、観客の生徒たちもヒートアップしていく。

 決着の時が近い。誰もがそう感じ、声援を強めていく。


 「よく言った……! なら、行くぜ……!!!」


 メラルが吠え、魔力が満ちる。

 再び赤く染まったメラルの体から熱気が溢れ、レンの体を熱くさせた。

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