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第8話 指導?

 レンとメラルを眺める野次馬はさらに増えていた。今やその数は人垣と言えるほどだ。

 対峙する二人は、そんな野次馬には目もくれない。メラルはレンを親の仇の如く睨みつけている。


 「決闘って……やめようよ。こんなところでは迷惑だし。貴方を投げ飛ばした事は謝るから……」


 レンは務めて冷静に振る舞った。

 内心では目の前の理不尽にイライラしていたが、それを表に出せば余計に面倒な事になるのは目に見えている。

 

 「いいや、そんな事は今となってはどうでもいい! 俺が許せんのはノエルさんを貴様のような男が好き放題している事だ!」

 「いや! だからそれも勘違い通り越して、思い込みでしょうが!! アンタいい加減に……」

 

 抑えてたイライラが口から漏れ出た。咄嗟に口を閉じたがもう遅い。

 

 (……しまった!)

 

 「……やる気になったか。それでいい、さあ来やがれ……!」 


 メラルが拳を構え、臨戦態勢に移る。

 既に周りの空気は戦闘の緊張感に包まれていた。


 「……っく!」


 もはやいつメラルの攻撃が来るかも分からない。

 こうなってはレンも構えを取らざるを得なかった。

 

 二人の間はおおよそ1メートルにも満たない。

 お互いの制空権が触れ、空間が歪み、今にも発火しそうになる。


 その緊張感にノエルも、メラルの取り巻きも、野次馬達も、思わず息を飲んだ。


 ーードン!!!!


 「痛!!」


 突然、メラルの背後に長細い影が現れ、ゲンコツをかました。


 「こーーら! メラル君!」

 「な、なにすんだよ先生!」

 「なにすんだよ、じゃありません!! また喧嘩ですか! いい加減に自分の立場を弁えなさい!」


 メラルに先生と呼ばれたその男は、真っ白な神父服に白髪、銀縁のメガネをかけた青年だ。

 一眼見ただけで聖職者だと分かるほどに、いかにも神聖な雰囲気を纏っている。

 

 「君も! メラル君の真似をして手を固めるんじゃありません!」

 「は、はい! すみません!」


 レンは素直に拳を解き、思わず背筋を伸ばした。

 この神父らしき男が現れた事で、メラル一行の緊張は別のものに変わった。

 まるで、生徒指導の先生に悪さを見つかった生徒達のような雰囲気にレンは少しだけ懐かしさを覚える。

 

 「さて、これは一体どういう事か、説明してもらいましょうか……」


 白髪の男はそう言ってメラルと取り巻き達に詰め寄っている。

 

 レンは内心、良かったと安心した。

 先生と呼ばれているという事は、この人も教師だろう。という事は、学内で起きた暴力沙汰に対処してくれるはず。

 少なくとも、彼の通っていた学校で体育教師をしていた四島先生はよく絡まれるレンをこのように助けてくれていた。


 しかし、ここは魔法学園。そして異世界。

 レンが期待するような常識は、通用するはずがなかった。


 ーー数刻後


 レンは、メラルと対峙していた。

 場所は広い競技場。観覧用の客席がぐるりと囲むように設けられており、多くの生徒達が声援を送っている。

 その中には、メラルの取り巻きや、ノエル、そして教師であるはずの白髪の男もいた。 


 「さあ! かかってきやがれ!!」


 そして、レンの眼前には、張り切って構えるメラル。


 「なんで……なんで……こんな事になるんだ!」


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