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第58話 送り出し

 数日後、レン一行は復興の進んだメルク西門のわきにいた。

 破壊された壁はしっかりと塞がれたが、広場や近隣の建物には未だに闘いの傷跡が色濃く残っている。


 一行はドーラが手配してくれた新しい荷馬車に食料を積み、出発の準備をしていた。

 今日、メルクを発つ。


 皆、少しだけ名残惜しい気持ちを抱えながら準備をしていると、レンの講義を受けた冒険者がちらほらと現れた。

 彼らはレンやサリーにお礼言うと、「教えていただいた技は必ず習得する、だから今度はその成果を見にメルクへ来て欲しい」と言ってくれた。


 教えたレンも、この世界の常識とはかけ離れ過ぎた技を理解してくれるのか、と不安に思っていた。

 それだけに、冒険者からかけられた言葉には胸にくるものがある。


 代わる代わる、彼らを送る人々は集まってくる。


 冒険者ギルドのガッド、ギルドマスターのエミー、連合組合長のドーラ、スミスの両親、メルク城の兵士長、ブリゲート神父など次々と言葉を交わしていく。


 「神父様、ところでノエルは?」


 ブリゲート神父に旅路の無事を祈ってもらい、レンはそれとなく聞いてみる。

 

 あの日の夜、アルドとレンは確かに事実を伝えた。

 ノエルの真剣な眼差しを前に、彼らはどう取り繕うか考えたが、結局は真実を全て話した。


 ノエルは黙ってそれを聞き終え、何故かほっとしたような表情で言った。


 『良かった……』


 宿へ戻り、後から帰ってきたサリーとスミスにもその事は伝えた。

 サリーは無用心だと怒ったが、レンもアルドも心配してはいなかった。

 ノエルを信じていたから。


 だがそれ以降、ノエルはレン達の前に姿をあらわす事はなかった。


 「ノエルは所用があり参りません。申し訳ない」

 「そうですか……僕らも彼女と一緒にいた間、楽しかった。せめて別れの挨拶はしたかったのですが、残念です」

 「ああ、ノエルが聞けば喜ぶでしょう。代わりではありませんが、彼女手製の薫製を荷物に入れさせてもらいました。よければ味わってあげて下さい」


 神父は手を差し出し、レンはそれに応じる。


 「皆様には感謝してもしきれません……! どうか、ご無事で……! よろしくお願いします!!」

 「ありがとうございます!」


 力強く握られた握手。

 レンは神父の想いをしっかりと受け取った。



 「ドーラ、何から何まですまないな。君には本当に助けられた」

 「ええ、本当に大変でした。請求は必しますのでそのおつもりで」

 「はははは! それでこそ連合商会の組合長だ!!」


 請求すると言う事は”メルクに必ず戻れ”と言う事。

 ドーラなりの想いがその言葉に乗っていた。


 ドーラは以前と変わらずメイド姿だ。

 隣にはメルク城の兵士長も鎧姿で居た。


 「アルド様、我らも貴方様のご帰還をお待ちしています。どうか、ご無事で……」

 「ありがとう。だが新しい城主が居るのだ、そんな事を言うものではないだろう」

 「ですが……! 此度の騒動はアルド様のお力がなければ……!」


 アルドは手のひらを向けて兵士長の言葉を止めた。


 「気持ちは分かるが、それ以上は言うな……。私とて、取りこぼしたものは計り知れない。より器量のある主人に心から尽くすのだ。私である必要などない」

 「そうですよ兵士長、アルド様を買い被りすぎです」


 傍からドーラは言った。


 「ご存知でしょう? この方に仕えるのは大変ですよ。我儘で、頑固で、そのくせ妙なところは臆病で、いつだって私たち従者は振り回されていました。ですが……」


 緩い風がドーラの黒髪を揺らす。彼女はそれを片手で抑えて言った。


 「貴方以上の器量など、持つ者がいるはずがありません」


 表情の変わらない、冷静な口調だったが、ドーラの想いが伝わるには十分な言葉だった。

 あまりにも変わらないドーラの口調にアルドは思わず吹き出した。


 「ふっ! あはははは! ドーラ、それこそ買い被りだよ!」

 「ええ、買い被っておりますわ。私だけでなく、メルクの商人全てがです」


 商人、という一言にアルドは止まった。


 「商人が?」

 「この荷馬車や必要物資は全てアルド様の旅路の無事を祈って、商人達から無償提供されたものです」

 「……そうか、それで」


 元々はドーラに荷馬車の手配を頼んだ訳ではなかった。

 メルクに乗ってきた荷馬車は教会ごと潰されてしまったので困っていたのは確かなので、ドーラが気を回してくれたのだと思い込んでいた。


 だが急いで手配したにしては、荷馬車に使われている部品や積み込まれた荷物に見知った商会や商人の名前が入っていた。

 ここには来れずとも、メルクの商人はアルドの無事を祈っている。

 そう感じ、アルドはメルクの街並みに目を向けた。


 人々が複雑に行き交い、支え合いながら復興へ向かっている。


 「後悔させないで下さいね。商業連合は、いつでもアルド様のおかえりをお待ちしていますから」

 「ああ。タダより怖いものはないからな……! それに私は、この街が、メルクが大好きだからな……!!」


 そう思いながら、アルドは足に力を込める。

 ”必ず戻る”。そう心に誓った。


◎読んでいただき誠にありがとうございます!!◎


大変恐縮ではございますが〜

少しでも本作を気に入ってくださった方

面白いと思った方


評価とブックマークを頂けると大変嬉しいです


作者の日々の励みにもなりますので

お手数ではございますが

どうか、よろしくお願い申し上げます。

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