845.補修
毛の補修には、特殊な接着剤――その素材が必要だ。
もっとも、ザンザスのダンジョンやら近隣で入手可能ではあるが。
「では、私は今日はこれで帰るとしよう」
「あっ、実は今年のぴよちゃん祭りなのですが……」
レイアはコカ博士を呼び止めた。
「今年は盛大にやりますので、もしコカ博士のほうでも何かあれば……」
「ふむ……考えておく。原稿が遅れ気味なものでな」
「原稿ですか? もしかして、月刊ぴよの『コカ博士と秘境ぴよ』ですか?」
レイアがものすごく食いついてきた。
『コカ博士と秘境ぴよ』は月刊ぴよの人気コラムである。
世界中の珍しい特徴、習性を持ったコカトリスを紹介する人気連載だ。
ステラも愛読している。
「ああ、これから東方の国で取材しようとしたのだが……許可が下りなくてな」
「むぅ、あちらはまだ閉鎖的ですからね」
「まだ数号分のストックはあるが、ダメなら企画からやり直しだ」
コカ博士は感情の読めない声で答える。
レイアはエストーナ王国のことを思い浮かべたが、さすがに口には出さなかった。
三人は中央倉庫を出て、人気のない区画に辿り着く。
「よし、ここなら大丈夫そうだ」
「ええ、もう周囲に人はおりませんので」
「建物に気を付けてでござる」
コカ博士が青色の魔力を放ち、ふわっと空に浮かび上がる。
長時間魔法を使っても、なお余裕のある魔力であった。
「では、また」
それだけ言うと、コカ博士は猛スピードで上空に舞い上がり、空を切り裂く。
あっという間にコカ博士の姿は見えなくなった。
「いつも通り、忙しない人でござる」
レイアはコカ博士から渡されたメモを見る。
「謎の人物だが、ぴよちゃんにかける情熱は本物だ」
「それは敬服するでござる」
とりあえず、像には大きな問題はなさそうだ。
補修だけ手早く済ませてしまおうとレイアは思った。
「ついでに飾りつけのアイデアも考えってと……ふっふふー」
こうして、レイアはるんるん気分で冒険者ギルドへと戻っていった。
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