843.倉庫へ
「改良を重ねておりますが……とても可愛いでしょう?」
ブレないレイアに対して、紫影が視線を送る。
レイアはしかし、喜々としてぴよ帽子を揺らし続けた。
コカ博士の眼光が鋭く光る。
「新型の毛はガリアン産、目の部分はアラバ山脈のドワーフからか。良質だな」
「ええ、その通りです。一目で見抜くとはさすがですね」
「当てるのが凄いでござる」
紫影には全然違いがわからない。
レイアには言えないので、心の中にしまっておくが。
「コカトリスらしさを再現できる素材は、それほど多くはない。音はどうなんだ」
「はい、これですね……! もちろん改良中で」
「あっ――」
紫影が声を出すと同時に、レイアがぴよ帽子の紐を躊躇なく引っ張った。
ぴよーー!
ぴよよーーー!
ぴよ帽子から、可愛らしいコカトリスの鳴き声が響いた。
コカ博士がじっとレイアのぴよ帽子を見つめる。
「……改善されているな」
「ありがとうございます……!」
「高音が途切れるときに、やや音がブれてコカトリスらしさがなくなるが……」
「凄いコメントでござるな」
「うぅ、その点については……目下、さらなる改良中でして」
覚えがあるらしく、レイアが恐縮する。
コカ博士に隠し事はできないのだ。
「2年前、フォン・マイアー博士が鳥類の鳴き声について論文を出した」
コカ博士が相変わらず抑揚のない声で続ける。
「おそらく、その鳴き声の改良の役に立つだろう」
「なんと! 取り寄せて確認します!」
そんな話をしながら、3人はザンザスの中央倉庫へやってきた。
中央倉庫は吹き抜けの高い建物で、数十人の職人が作業していた。
冬至祭の山車はかさ張るので、普段はパーツごとに保管されている。
それを今、この中央倉庫で集めて組み立てているのだ。
「今は台車の部分を組み立てています」
「飾りつけはまだ選定中でござる」
「順調そうだな」
中央倉庫には、10メートルの巨大コカトリス像が鎮座していた。
像といっても硬めの毛で覆われており、どちらかというと超巨大なぬいぐるみである。
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