842.コカ博士の来訪
「ぴよ祭りの提携も確約できた。チラシのラフも仕上げないとな……」
「それでござるが、今日はもうすぐコカ博士が来るでござるよ」
「むっ……? 今年はいつもより早いな」
コカ博士は月刊ぴよにも寄稿する、謎のコカトリスの着ぐるみ博士だ。
まぁ、その中身はエルトの兄ヴィクターなのだが。
いつもふらっと来ては去っていく――しかしその知識と経験は確かなものだ。
時にザンザスのぴよグッズの監修も、無償でやってくれるのだ。
特にコカ博士の改良したぴよぬいぐるみの評価は極めて高い。
その時、コンコンと扉がノックされ、ギルドの職員が顔を見せる。
「あのー、コカ博士がお越しになられていますが……」
「噂をすれば……。今行こう」
レイアは紫影とともに応接間に向かった。
ステラの木像が置かれた応接間には、すでにコカ博士が座っていた。
レイアが知る限り、最もふわもっこな着ぐるみであり、細部までこだわり抜いている。
その頭の上には白の博士帽が取り付けられているのだ。
レイアを見ると、コカ博士がふにっと羽を掲げた。
「久し振りだな」
「ええ、お元気でしたか?」
「ふむ、問題はあるが――ザンザスとは無関係だ」
コカ博士は抑揚のない、しかし艶のある声で答えた。
声に若さはあるが、見た目とは裏腹にそれほど愛想は良くない。
だが、すでにレイアもその辺りを気にする間柄ではなかった。
「そろそろ来てもらおうと思っていました。ちょうど良かったです」
「私もそう思った。山車はいつものところか?」
「街の中央倉庫にあるでござるよ」
紫影が答えると、コカ博士がぱっと立ち上がる。
「では早速行こう。悪いが時間がないからな」
三人は冒険者ギルドを出て、ザンザスの街並みを移動する。
ぽよん、ぽよよん……。ふかふかのコカ博士の着ぐるみが揺れる。
コカ博士の中の人が誰なのか、知る者はごく少ない。
強い魔力を持ち、大金持ちでもある。
さらにコカトリスを含めて魔物学の深い知識があった。
ほとんど間違いなく、どこかの大貴族だろうが……。
しかし着ぐるみの中身を詮索するのは、非礼なのだ。
「前に比べ、街に活気があるな」
「ヒールベリーの村のおかげで、色々と盛り上がっています」
「ふむ……そうか。それはいいことだ」
それからコカ博士の視線がレイアの頭――ぴよ帽子へと注がれた。
「ところでその素晴らしい帽子には、特別な機能がありそうだな」
お読みいただき、ありがとうございます。







