834.祭りの前打ち合わせ
夕方、ナールとアナリアを呼んで冬至祭の説明をする。
二人とも話を聞くとぱぁっと顔を輝かせた。
「にゃにゃーん。いいお話だと思いますにゃ!」
「冬至祭は本当に観光客が来ますからね、村の宣伝にはもってこいです」
ザンザス在住だったアナリアが頷く。
「何度見ても、ザンザスの山車は本当に華やかですにゃ!」
「気合いの入ったギルドは、毎年のように山車に新しい飾りをつけますからね」
「ほう……毎年、山車を新しくするわけではないんだな?」
「はい、山車はどれも巨大ですからね。本体は補修して……取り外しできる飾りだけ新しくします」
なるほど、費用の節約には合理的だな。
一度作れば、また使えるというのは大きい。
「にゃ! コカトリスの山車もそのはずですにゃ」
ふむふむ、こうした情報が手に入るのは頼もしい限りだ。
「資料は後でレイアが持参するそうだが……やっておくべきことはあるか?」
「まず大きな、特注の台車が必要ですにゃ」
「それについては、図面があればわたしが監督できます」
ステラがすっと手を上げる。彼女は大工仕事も超人的だからな……。
数日間、本当に不眠不休で働ける。
いや、そうして欲しくはないのだが……ぴよちゃん山車だとやりかねない。
心の隅にそっと労働基準法を忍ばせておく。
「あとは飾りつけですが、染料や薬品が必要ですね。それは私が担当しましょう」
アナリアの本業だからな。その辺りは任せよう。
ナールが天井を見上げながら、指折り数えている。かわいい。
「あとはどんな山車を作るか、ですにゃ。これが一番大事ですにゃ!」
だろうな、それが一番大事だ。
巨大なモノを作るだけなら、俺が魔法を使えばいいだけだし……。
この冒険者ギルドの、ぴよっとした建物のように。
しかしそれでは意味がないだろう。
「……それについてなんだが」
俺はそこで一呼吸置いて、全員を見渡した。
「村の人からアイデアを集めて、ひとつの山車にするのはどうだ?」
「にゃ! それは素晴らしいですにゃ!」
「とてもいいかと思います!」
ナールとアナリアは笑顔で頷いた。
これなら村の人も参加できるし、良い記念になるだろう。
自分の手で参加すれば、きっと思い入れも深くなる。
「わたしも、もちろん賛成です……!」
「よし――それじゃ村の力を合わせて、山車を作ろう! 冬至祭りだ!」
「「「おー!」」」
ということで、俺たちは冬至祭に向けて準備することになった。
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