832.必要なものは妥協と代償
「わたしの全く知らない、わたしの末裔が会いに来るんですよ? 嫌な予感がします」
「まぁ、来て話すのはその件だろうな」
ステラが復活したとなれば末裔の名乗りにも支障が出るかもしれない。
というより、ステラの末裔ではないわけだしな。
それらの王家の正当性に疑問符がつく。
なので、機会があったらステラと話をしておきたいのだろう。
「先方に手土産はあるそうで。訪問の警備費として、金銭的援助の用意はあるそうです」
「ほう……取引の用意はあるということか」
「ザンザスの議会としては断る理由がありません。ステラ様の末裔を名乗っている王家ですし」
この件についてレイアは中立的である。
個人の判断とザンザスの判断は別、ということだろう。
まぁ、ステラの復活前なら絶対に丁重な出迎えをしていただろうからな。
「……その人たちとわたしは、関係がありませんよ」
ステラはやはり気乗りがしないようだ。
俺としてはどうだろうか。
うーむ……。
「気乗りしないのはわかるが……」
しかし後々になって大きな揉め事になるのも困る。
ステラの末裔を名乗る国々で、ステラをどうこう取り合う事態もあり得る。
それならば……一度、きちっと話をするべきとは思う。
あとでアレコレ言われるよりは、先にすっきりさせたほうがいい。
「残念ですね……。エストーナ王国からのお金で、冬至祭を豪華にしようと思いましたが……」
レイアがややわざとらしく首を振った。
「史上最大のぴよちゃん祭りは見直しですね」
「ちょっと待ってください」
ステラがぐっと身を乗り出す。
「ヒールベリーの村も乗ろうと思ったんだが……」
「乗るんですか……!?」
ステラが目を輝かせた。もちろん、お金をくれるなら貰って使うまでだ。
ダメ押しとばかりにレイアが言った。
「ニューぴよグッズも作りますよ、この機会に!」
レイア自身も乗り気だった。
当然だろう。降ってきたお金でぴよちゃんグッズを作れるのだ。
(いや、まぁ……それだけじゃないはずだが……)
ステラの機嫌を取って丸く収める利益。
俺らとしても先方の国を糾弾したいわけじゃない。
うまーくまとめたいだけだ。
「くっ……仕方ありませんね。そういう事情であれば……」
ステラが頷いた。わかる、もうステラの頭の中は踊るコカトリスでいっぱいだ。
「エストーナの王家に会いましょう……!」
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