826.噴水ができたら
ポチ!!
ディアはちゃんと青いボタンだけを押した。良かった。
同時に穴の中の装置が震え、水たまりに波紋が生じる。
「順調もぐ!」
イスカミナが声を上げると、どばっと水柱が上がった。
それは俺の身長と同じくらいまで高く上がる。
優雅で細く――しかも柔らかい緑色だ。
「色が付いているんだぞ!?」
「ウゴ、きれー!」
「ぴよー……! みどぴよっ!」
「ふふふ……照明魔法具も組み合わせて、色付きにしてみたよ」
ぴこぴこ。ナナが得意気に羽を動かす。
設計図で知っていたが、実際に目にすると全然違うな。
「素晴らしい技術だ……!」
「もぐ! 最先端の噴水もぐ!」
「これはいいですね、村にもぴったりです!」
本当にそうだな。緑色が村の雰囲気に合う。
こうして村人へ噴水がお披露目され、除幕式は終わった。
嬉しいのは除幕式が終わっても、村人はわいわいと噴水から離れないことだ。
もっと見ていって欲しい。
「わぁー、近くで見るとまた違いますねー」
ぽてぽてとテテトカとコカトリスたちが噴水の前に現れた。
テテトカはコカトリスに抱えられている。
身長的な関係かな?
「もぐ! 綺麗な水を美しく、もぐ!」
テテトカは緑色の噴水をほえーと見上げる。
「これって飲めるんですー?」
「飲めるもぐよ! 色は光で付けてるだけもぐ!」
あ、その答えは……まぁ、予想の範疇であったが。
「じゃあ飲みますー。ごくっごく……」
テテトカは一切躊躇せずに噴水から水を飲む。
コカトリスたちも噴水に頭を突っ込んでいった。
「ぴっよー!」(緑色でも味は変わらないぜー!)
「ぴよぴよぴよー!」(ごくごくごくー!)
ちなみに他のニャフ族なんかはちょっと引いていた。
さすがに噴水の水を飲む感性はなかったらしい。
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