825.除幕式
村の外は紅葉に染まっているが、大樹の家が並ぶヒールベリーの村はそうではない。
いつまでも青々と茂っている。
そのコントラストに感慨を深めながら、秋の日に噴水の除幕式が行われた。
冒険者ギルドの前に作られた豪勢な噴水。
ザンザスからも人が集まって、結構な賑わいだ。
いつも通りぴよ帽子を被ったレイアがうんうんと頷く。
「新しい観光名所とは、なかなか良い案ですね」
「ああ、ブルーヒドラの核を有効活用できそうで安心だ」
これが禍を転じて福となす、だろうか。
「噴水には綺麗な水と高度な制御装置が欠かせません。技術力がないと不可能ですね」
「これが目新しいランドマークになってくれればな」
配管のイスカミナと噴水装置のナナがいなければこうもスムーズにはいかなかった。
ということで除幕式が始まる。
俺から軽い挨拶をして、ステラが幕を外す。
おおーという歓声。
噴水は……ちょっと上向いて、羽を広げたコカトリスの像だ。
そこの口や羽から噴水が出てくる仕組みになっている。
「では水を入れますわー!」
ジェシカがライオン頭の杖をくるりと回転させる。
「がおおー」
ライオン頭の口から、勢い良く魔法の水が放たれた。
ステラがこそっと小声で身も蓋もないことを言う。
「これ自体が噴水な気が……」
「一応、魔法だから……」
水はどんどん穴に流れ、装置内部を満たしていく。
「スイッチはここにあるもぐ!」
じゃーんとイスカミナが有線の操作盤を取り出す。
「押してみるもぐ?」
イスカミナが操作盤を俺達に差し出す。
「……ごくぴよ。やってみたいぴよ」
ディアが羽をぱたぱたさせる。好奇心は大事だからな。
「ああ、やってみるといい」
俺は操作盤をイスカミナから受け取り、ディアの前に持って行く。
操作盤は意外とスティックとボタンが多いな。
「全部押していいぴよ?」
「だめもぐ」
「だめぴよか。こっちの赤いレバーはどうぴよ?」
「やばもぐ」
「残念ぴよねー……」
「真ん中の青色のボタンだけ押すもぐ」
「……ということだ」
「わかったぴよ!」
ディアがしゅっと羽を立てた。
「ぽちっと――ぴよ!」
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