821.アルミラージに乗ろう会
さきほどの雨が嘘のように晴れ間が広がっている。
ディアはアルミラージの頭の上に乗っていた。
俺も別のアルミラージに乗ってそばで見ているのだが、ちゃんと乗りこなしている……。
「ぴよ、ぴよ……! いいぴよっ?」
「ああ、きちんと乗れてるぞ」
「ぴよ! これもマルちゃんに乗ってきた成果ぴよ!」
そういうものか……?
しかし言われてみると、四足歩行犬形態マルコシアスにディアはいつも乗っている。
まさかその経験が活きるとは。
「我も……ゆ、ゆれ……!」
マルコシアスはアルミラージの背にしがみつくような形だな。
いや、そこまでの体勢にはならないとは思うのだが。
「マルちゃん、大丈夫ですか? ガタガタですが……」
ステラは両手を離して余裕の騎乗である。
「ど、どうすればいいんだぞ?」
「もっと脚と腰に力を入れて……アルミラージちゃんに任せてもオッケーですよ」
マルコシアスがなんとか上体を起こす。
「こ、こうだぞ!?」
「もっと緩やかにぴよ! 全身で感じるぴよ!」
マルコシアスがふらふらしながらも、さらに背筋を伸ばした。
「こ、こういう感じなんだぞ……!?」
「ウゴ、安定してきてる!」
ララトマのほうは……おっ、きちんと乗れているな。
ウッドの腕を取りながらだけど、しっかりとした姿勢を保っている。
「はぁー……高いですねー」
「ウゴ、こわい?」
「大丈夫です! アルミラージちゃんとウッドが支えててくれてますです!」
アルミラージの移動は速い。行きの半分の時間で村まで辿り着いた。
そうして村へ戻ると、カイ達はいくつか書状を書いて帰る支度を始める。
宿泊所で俺はカイと最後の話をしていた。
「では、ここにサインを――」
カイに促され、俺は書状にサインをする。
内容を要約すると『宮廷占星団様へ。今回の予知は役に立ちました。ありがとう!』だな。
別の予知内容でも、カイとアルミラージがいれば同じ結果になったような気もするが。
それは考えないでおこう。タダだしな。
「にしても書式の定型文があるんだな……」
「一応、国家機関ですので……」
「ちなみにコレ、予知が外れの場合も定型文はあるのか?」
「ありますよ。ご覧になりますか?」
カイがさっと書状を取り出した。
どれどれ――『宮廷占星団様へ。今回の予知は大変残念な結果となりました。次回の予知をお待ちしております』と書いてある。
「割と気楽な文言だな……」
まるで就活のお祈りメールみたいな書き方だった。
「外れることも多いので……」
「まぁ、今回は助かった。忙しいとは思うが、今度はゆっくりしに来てくれ」
アルミラージとまた触れ合いたいからな。とは口に出さないが。
「はい、あの子達もここは気に入ったようです。また機会があれば、ぜひ!」
そう言って、カイ達は村から出発していった。
本当に慌ただしかったな。
とはいえ、村を経営していればこういうことも起きる。
この時の俺は知らなかったが――意外とカイ達との再会は早く訪れるのであった。
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