819.とんぼ返り
待っている間に少し休む。
マルコシアスがふにっと俺の隣に来た。
「レベルが上がりそうだったんだぞ」
「……レベル? なんだそれは?」
マルコシアスはたまに謎めいたことを言うからな。
「上がってからのお楽しみなんだぞ……!」
「そ、そうか……」
カイはアルミラージをブラッシングしながら、にんじんをあげている。
労いが必要だからな。
「よーし、良く頑張ったねー」
「きゅいー!」(頑張ったよー!)
「うんうん、頑張ったねー」
「きゅっきゅいー!」(もっとご飯ー!)
ぐいぐい。アルミラージがカイの腰に頭をすり寄せる。
「ああっ、もうダメだってばー!」
「きゅいきゅー!」(えいえいー!)
かわいい。カイとアルミラージにはやっぱり特別な絆があるんだな。
「ぴよぴよ」(いい運動だったぜ)
「ぴよ」(ナイススイミング)
潜っていない、陸に残ったコカトリスはやり遂げた顔をしている。
普段は穏やかだが、やる気になるとパワフルだ。
「ところでカイ、コカトリスは大丈夫なのか?」
カイは首を傾げながら、コカトリス達を見渡す。
「そういえば――そうですね。一生懸命頑張っている姿を見ていたら、怖くなくなりました」
「ぴよ! 頑張っている姿のおかげぴよー!」
カイが優しく微笑む。
「同僚にもコカトリスショックを患っている方々は何人かおりますが……コカトリスの良さを伝えていこうと思います」
……何かおかしい気はするが、まぁいいか。
苦手な物がなくなるのはいいことだ。
「そして凶兆は全て解決した、ということで私も帰還いたします」
「もう出立するのか?」
「ええ、村に戻って準備をしたらすぐ出発します」
だいぶ急な話だな。ほとんどとんぼ返りだ。
さすがに大変な気もする。
「少しゆっくりしても良さそうだが」
「そうしたいのは山々ですが、曲がりなりにも的中しましたので。迅速に報告しないといけません」
ううむ、宮仕えというのも大変だなぁ……。
お読みいただき、ありがとうございます。







