814.ステラとコカトリス
一方、ステラも湖を疾走していた。
「間に合いませんね……」
すでにブルーヒドラの首も根元の水柱も移動を始めている。
甲高い唸りが湖に響き渡った。
「ギイイイーー!!」
担がれているナナが申し訳なさそうに声を出す。
「ぐぅ……ごめんねぇ」
すでにびゅんびゅん羽はお腹のポケットに収納されている。
申し訳なさそうなナナにステラが頷いた。まだ反省の時間には早い。
「大丈夫ですよ。魔力はまだ残っていますよね? あの鞭が必要です!」
「ぺちぺちムチだね……!」
ナナが担がれながら、お腹をごそごそとした。
猛烈な魔力の波動が展開される。
「よいしょーっと!」
ナナの右の羽にぺちぺちムチが現れた。
湖畔を見ると、エルトとウッドがアルミラージに乗って移動している。
どうやら狙いは同じ、ブルーヒドラのようだった。
「うさちゃんはかなりの速度、ですが……」
ぽつりと肩に雨粒が落ちる。空の暗さは変わらない。
もう一度、雨が降ってきそうだった。
「このままだとまずいですが――おや、ぴよちゃん?」
ステラが横を見ると、コカトリスが必死に泳いでいた。
その速度はステラと同じくらいの超高速である。
さらにコカトリスはお互いにぴよぴよしていた。
「ぴっぴよー!」(突撃が必要だー!)
「ぴよー?」(投げるー?)
コカトリス4体が泳ぐのをやめて、ふたつの組を作る。
片方のコカトリスが、もう一方のコカトリスをやや斜めに持ち上げているのだ。
まるで砲丸投げのような体勢である。
それを見たナナが絶句する。
「ま、まさか……」
ナナが呟くと同時に、コカトリスがコカトリスを投げる。
ぶおんと風が巻き起こる。
「ぴよぴよー!」(れっつごー!)
風を切り、放射線状にコカトリスが射出される。
かなりの超高速だった。
「ぴーよ!」(そーい!)
パワフルに打ち出されたコカトリスは空を飛んでいた。
ナナが驚愕に目を見開いている。
「む、無茶でしょ?」
「いえ……狙いも角度もバッチリです。野ボールの成果ですよ!」
ステラの言う通り、コカトリスの狙いは正確であった。
確実にヒットする。風を切り、2体のコカトリスが水柱へ飛ぶ。
「ぴよー!」(そいやー!)
「ぴっよー!」(とりゃー!)
コカトリスの重量と魔力たっぷりの体が、水柱にぶち当たる。
バシャーン!!
コカトリスがブルーヒドラの水柱を蹴散らす。
「ギャオオーー!!」
ブルーヒドラの首が衝撃とともにいくつかはじけ飛ぶ。
これで時間を稼ぐことができる。
「ふふっ……まさに野ボール魂ですね!」
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