812.水柱
「いいのか!?」
「はい、これなら素早く移動できるはずです!」
「助かる!」
俺には魔力はあっても移動手段に乏しい。
植物魔法に弱点があるとすれば、足の速さだ。
それを補強する手段が限られる。
だが、アルミラージに乗せてもらえるなら――。
そこで俺ははっとした。
「……ウッドを運ぶのは?」
雷神球を投げるならウッドが適任だ。しかしサイズ的にウッドは大きすぎる。
子ども用自転車に乗る大人みたいな感じになってしまう。
俺の問いかけにカイトが胸を張る。
「大丈夫です、2体のアルミラージにまたがるように……うつ伏せになってもらえれば!」
「ウゴッ!? む、無茶じゃない……?」
本当か……?
しかしカイトとアルミラージは自信満々であった。
「この子達は厳しい訓練を潜り抜けているから、イケます!」
「きゅい!」(イケる!)
アルミラージの口から食べかけの芝生が出ているが……。
しかし、問答をしている暇はない。
「ウゴ……じゃあ、お願いする?」
「馬より速いはずだしな……」
この際、利用しない手はない。
「きゅい!」「きゅっきゅい!」「きゅっぷい!」
カイとアルミラージが素早くやり取りをする。
何を言っているのかはさっぱりだ。信じるしかない。
振り返ったカイがぐっとガッツポーズする。
「これで行けます。どうぞ、乗ってください!」
「わかった、ありがとう!」
俺はアルミラージの背に乗った。
ふもっとした乗り心地で……意外と良い。
うつ伏せになったウッドは2体のアルミラージにまたがる形だ。
人というより細長い荷物を運ぶやり方だった。
だいぶ不安ではある……。
しかし乗ったウッドは俺の心を見透かして頷く。
「ウゴ……たぶん、大丈夫! 意外と安定してる!」
「きゅきゅっい!」(いつでもオッケー!)
アルミラージの目つきがさっきまでと全く違う。
使命感に燃える瞳だ。
「よし、出発だ!」
俺が呼びかけると、アルミラージが湖畔を駆け出す。
もふっとした身体に見合わず、ぎぎゅんとした加速する。
全身に風を受ける。
あっという間にカイ達は見えなくなっていた。
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