810.救助
「水の上を凄い速さで……間に合いそうですー!」
「ぴよ! きっとセーフぴよ!」
うむ……ステラの俊足は信じられない領域だ。
あっという間に湖の彼方へ走っていく。
「ウゴ……でも煙は止まらない」
「そうだな……。高度も戻ってない」
ウッドはナナの高度を心配しているようだ。
確かに、高度が戻れば危機は去るのだが……その望みは薄そうだった。
「わふ。救援は間に合うんだぞ」
「それは落ちるということだよな……」
「……世の中には避けられない悲しみもあるかもなんだぞ」
「ウゴ……それって諦め……?」
「達観ってやつなんだぞ」
マルコシアスはもう落ちることは確定的に考えているようだった。
こういうところはリアリストでもある。
ステラとコカトリスはすでにかなり進んでいた。
ナナの高度も下がり続けており、湖面までもう10メートルほどか。
さらに降下し続け、ナナが湖面へと激突しそうになる。
だが、ステラたちのほうが早かった。
水しぶきを上げながら落下地点へ滑り込む。
ステラとコカトリスが湖に葉を広げた。
よし、これで落下の衝撃からは守られるはず。
「いけるぴよ!?」
「葉の位置はちょうど良さげなんだぞ」
「あれなら受け止められそうだな……!」
ナナの落下スピードはかなりのものだった。
落下まであと5メートル、3メートル……。
ステラとコカトリスが葉の位置を修正し続ける。
「ごくり……ぴよ!」
ついにナナが葉の上に落ちる。
ぽいん。
つんのめるように落ちたナナが葉の上で跳ねた。
ぽよよん。
だが跳ねたナナは葉から飛び出さなかった。
「ウゴ、ナイスキャッチ!」
「でも煙が止まってない――」
するとステラが素早く葉の上に登り、黒煙を上げる魔法具をナナから取り外す。
そして、ぽーいと魔法具を上空へフルスイングした。
直後。
ボボンッ!
ナナの背中のプロペラが二度目の爆発を起こした。
「ぴよー! 爆発ぴよっ!」
真っ黒な煙が湖の中央を覆う。
風に吹かれ、煙が散る。
「……ぎりぎり爆発からは逃れられたように見えたが」
「ウゴ! 大丈夫だよ!」
「あっ、葉の上に手を振る人がいますですー!」
そこにはぐったりした着ぐるみのナナとステラがいた。
ナナに肩を貸すステラがにこやかに腕を振っている。
どうやら大丈夫……でいいんだよな?
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