809.緊急事態……!
「魔法具がボンしたんだぞ」
「…………」
ステラが絶句する。
俺にとってもよもやの展開である。
「おいおい……」
「わっふ。焦げた匂いもするんだぞ」
マルコシアスが言った直後、ナナの背中からもくもくと黒煙が上がる。
間違いなくマズい展開だ。
「ぴよー! かつてない危機ぴよっ!」
「ウゴ、燃えちゃってる……?」
「多分そうだな……。ふらつきも大きくなっている」
遠くからでもわかるほど、ナナが揺れている……。
黒煙も右に行ったり左に行ったりだ。
「助けないとマズいな」
「そ、そうですね……! ああっ、落ちていきます!」
ふらつき度が大きくなるとともに、ナナの高度が下がり始める。
今、いきなり数メートル下がったか?
「どぼんぴよよ!」
「ぴよっ!」(まかせてっ!)
「ぴよぴよー!」(困ってるぴよは見過せない!)
コカトリス達が一斉に湖に向かって駆け出す。
ナナの高度はさらに下がっていく。
うーむ、今は二十メートルか十五メートルほどか。
このままだと湖に落ちるのは確実だ。
だが、落ちないほうがいいには決まっている。
「受け止められるか……?」
俺は植物魔法でリング状の葉を生み出した。
大きさは数メートル四方、落下地点のマット代わりである。
魔力を注ぎ込んだのでそれなりの耐久性があるはずだ。もちろん弾力もある。
「これを敷いてくれ!」
「はい、持って行きますー!」
ステラが素早く生み出した葉を抱えて、猛然とダッシュする。
はや……。とても追いつけない。
「エルト様はこちらに待機を……! アルミラージちゃんをお願いします!」
「わ、わかった!」
ステラはあっという間に湖の岸へと辿り着いた。
「「ぴよー!」」(とりゃー!)
コカトリスも雨降る湖へダイブしていく。
「ぴよよー!」(急げ急げ―!)
そのままコカトリスは見事な泳ぎっぷりをみせる。
潜水だけではなく、力強い泳ぎもできるらしい。
「わたしも急ぎますっ!」
しゅばばば……!
ステラは湖の上を走っていた。
「かあさま、走ってるぴよ……!」
「母上なら当然なんだぞっ!」
前も似たようなことはやっていた気がするが……。
強化の応用のはず。
ステラ以外はあのスピードでは到底無理だと思うが。
ナナもステラ達に気が付いたのか、こちら側へ近づいている。
なんとか接近して欲しいが……ステラとコカトリスに任せるしかない。
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