803.寝る前に
雷神球を渡したアナリアは、休憩のために土風呂エリアへと来ていた。
「身体をすっきりさせて、それからぐっすりしましょうかね」
雨が降りそうな天気ではあるが土風呂は辞められない。
疲れた身体に土風呂がよく効くのだ。
「ご機嫌うるわしゅー」
土風呂の管理人、テテトカが手を振る。
「ご機嫌麗しゅう、です! 今日もじょうろ片手ですね」
「雨が降っても土風呂は変わりませんしー」
ドリアードには雨天中止という文字はなかった。
土風呂もしかりである。
「頭から水を浴びるなら、天候とか関係なくないですー?」
「それは一理ありますけれど」
そう、たとえ雨でも水やりコースだと水は頭に注がれる。
それにドリアードにとって水やりは命なのだ。
「まぁ、雨の日に土風呂もイイかもしれませんね」
そこへイスカミナの声が聞こえてきた。
「ハマってるもぐねー」
「あっ、二人も来たんですか」
「お邪魔しますわ」
イスカミナとジェシカが木の桶を持って、大樹の塔へやってきた。
「もっぐー。エルト様に雷神球は渡せたもぐ?」
「ええ、ばっちりです!」
「それは何よりですわ」
「ふたりはどうして木の桶を持って……?」
「なにやら水に色々混ぜたいからとー」
「そういえば、イスカミナがそんなことをちょろっと……」
土風呂の近くに木の桶を固定し、ジェシカが魔法で水を入れる。
「ドリアードの方々にどうなのか、一番に試してほしいですわ」
「がおー」
獅子の頭の杖から、どばばーとお湯が出る。
「人体実験は感心しませんね」
「人聞きが悪いですわ!」
「ジェシカに騙されて、仕方なくもぐ……」
「ちょっとー! ですわ!」
「冗談ですよ。ジェシカもこの村を良くしようとしているのでしょう?」
「ええ、そうですわ……!」
「ありがとうございますー。草だんご、食べます?」
テテトカがジェシカたちに草だんごを差し出す。
「おやつとしてもらいますわ」
「私も好きなんですよね、これ」
「すっきり甘さでおいしいもぐよねー」
もしゃもしゃ。三人は揃って草だんごを食べる。
やがて桶が満杯になるほどのお湯が溜まった。
「ここからは私の仕事もぐ!」
イスカミナがバッグから皿を取り出して様々な色の粉を置いていく。
それらは鉱石や植物を加工したもので、温泉の元になるのだ。
「まずは嗜好品からもぐ。それがうまく行ったら農業にも活かすもぐ」
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