801.湖へ
ふわもっこ同士、通じ合うものがあるのかもしれない。
「ふんふんー」
「母上もご機嫌なんだぞ」
「ウゴ、それでどこに行こう?」
それを決めていなかったな。
村の中を歩き回るのでもいいが……。
「ふむ……リクエストはあるか?」
「それなら湖に行ってみたいです!」
ララトマがしゅばっと手を上げた。
「あそこはいいですよ、水浴びもできますし!」
「ぴよぴよ」(水のたくさんあるところ、いいよねー)
「ぴよー」(いいかもー)
湖は絶景だし、貯水池では味わえない雄大さがある。
「あそこは眺めもいいしな」
「行って戻って、ちょうどいいかもですね」
確かにな。往復で2時間くらいだ。
ちょうどいいお散歩だな。
「よし、湖へ行こうか」
「ぴよ! さんせーぴよ!」
というわけで、俺達は湖へお散歩しに行くことになった。
村から湖へ向かう、その間際――。
「あっ、エルト様ー!」
アナリアが息を切らせて俺たちの元に走ってきた。
こんなに慌てているアナリアは珍しいな。
「はぁはぁ……すみません、お呼び止めしてしまって……」
「それは構わないが……」
アナリアは大きなバッグを肩から下げている。
「雷神球、とりあえず2個できまして……!」
言いながら、アナリアはバッグから丸いフラスコ瓶を2つ取り出した。
だいぶ重かったはずだが、急いで持って来てくれたんだな。
「おおっ、本当か……! どれどれ」
アナリアから渡された丸いフラスコ瓶を受け取る。
瓶の中には、鮮烈な黄色の物体が詰まっていた。
それはまさに稲妻を閉じ込めたみたいな……。
ふむふむ、良さそうだな。ステラも興味深そうに覗きこむ。
「これが雷神球ですか……! 普通の雷撃ポーションとは色も違いますね」
「ああ、普通のは淡い黄色で液体だからな」
普通の雷撃ポーションは液体だが、これは稲妻が弾けている。
これが一番の違いだな。ちゃんと大丈夫だ。
「うん、しっかり出来上がっている」
「はぁ、良かったです……!」
ステラがアナリアの顔を覗き込む。
「でも目の下にクマがありますよ? 大丈夫ですか?」
「ええ、少しでも早く作りたくて……」
「無茶はダメぴよ! お肌は大切ぴよ!」
「ふふ、そうですね。ちょっと寝てから続きを――」
アナリアが言いかけたところに、ディアがすっとにんじんを差し出す。
……うん?
「これでけんこーになるぴよよ……!」
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