800.お散歩日和
「きゅー」(うらやまー)
「ほうほう、その話題ですか……。せっけんも興味ありますかね?」
「あると思うぴよよー!」
和やかな光景だな、うん。
で、そこにマルコシアスがちょんちょんとしてきた。
「父上、ひつじの人が呼んでいるんだぞ」
「うぅ……」
カイが悲しそうな目で俺を見つめていた。俺は小声で謝る。
「すまん、こっちに気を取られていた」
「いえ、ずっと動けなかったので良かったです……。コカトリスが囲んできてて」
「起きるわけにいかなかったんだぞ?」
「どうにも条件反射で……」
ふむ、コカトリスショックは重症だな。
「普通に家に戻ればよかったのに」
「そうすると、今度はアルミラージがドツいてくるので……。お散歩を放り出すと絶対に怒ります」
ううむ、そういう苦労もあるのか。大変だな。
俺はコカトリスとアルミラージの団らんを見つめた。
「アルミラージの散歩なら、俺達で請け負ってもいいが……」
「この人はどうするんだぞ?」
「ベッドに寝かせるフリで、家に戻せば良くないか?」
俺はすすっと宿泊所を指差す。
「それで距離を取って、後からついて来てもらえれば……」
「喋るコカトリス――ディアちゃんでしたっけ、アルミラージとも話せるんですね……」
ディアのことはカイには話してある。
隠すも何も大体の人は知っているしな。
「まぁ、アルミラージと会話できるのは俺も予想外だったが」
「会話できる方がおられるなら問題はないと思います……はい」
そういうわけでカイを一旦、家に運ぶことにした。
俺はステラ達になんでもないように言う。
「ベッドで寝かせてくる」
「ぴよ! そのほうがいいぴよよ!」
「おやすみなさい……!」
ステラはほわほわモードだが……指をぴっとサムズアップしているな。
ステラの聴覚は超人レベルだ。多分、カイとの会話は聞こえているはず。
「きゅい……!?」(お散歩は……!?)
アルミラージがめっちゃ見てきた。
すでに『心外ですぞ』ムードが出ている。
カイは俺の肩越しに、
「お散歩はって、聞いてきています」
「ああ、お散歩は俺達でやるからな。一緒に村を見て回ろう」
「ぴよ! 村を回るぴよよー!」
「きゅー!」(お散歩やったー!)
「ぴよー!」(歩き食いだー!)
というわけでカイを家に入れ、村を散歩することになった。
と言っても、後からついて来ることになるが。
「ぴっぴよー」(るんるんー)
「きゅっきゅいー」(らんらんー)
コカトリスとアルミラージはとても楽しそうだな。
お読みいただき、ありがとうございました。







